コロナ給付金の不正受給「10分で20万円」の衝撃。その悪質手口は?
月内なら売上の調整は意外と簡単
たとえば、冒頭の生保営業マンのように業務委託契約で会社所属する人なら、別事業で「創業が1年未満の個人事業をやっていたことにして、持続化給付金を不正受給できる」と、前出のA氏は語る。
「創業1年未満の場合は比較できる事業収入が存在しませんが、2019年の稼働していた月平均の事業収入に比べて50%以上減少していると“創業特例”が適用されます。今年はコロナの影響で確定申告の受付延長も認められているので、『個人事業主をやっていました』として期限後申告をしてしまえばいいのです」
実際、国税庁は当初は4月16日まで延長していた確定申告の受付期間を、今後は4月17日以降でも期限を区切らずに柔軟に受け付けるとしている。1か月の売り上げを後から操作し、給付金がもらえる最大の金額にしてしまう――理屈としては可能かもしれないが、月々の売り上げをそんな簡単に入れ替えることができるのだろうか。
「税務署としては、1年間で支払う税金の金額が変わらなければ、年度内の売上のズレはそこまで細かくチェックされないのです。おまけに売り上げを低く見せるために期限後申告をしたとしても、それが不正受給を目的にしたかを見極めることは難しいです」
休業協力金、不正の手口
また、東京都から支給される休業協力金。この不正受給の手口は明快だ。存在しない事業を個人が自宅で行っていたことにしてしまうのだ。再びA氏に聞いた。
「自宅でできるうえ、複雑な開業申請の必要のない、個人塾などを営んでいたことにする人が多いようです。受給するのには休業を証明する店舗写真や、サイトのスクリーンショットを用意すればいい。開業時の証拠は出す必要はありません」
とある不正受給を促すコンサルティング会社は、ホームページ作成費で5万円、税理士のハンコに3万円。残りをクライアントと折半するというスキームで100万円近い売上を立てているという。実際に電話で勧誘を受けたというOさん(30代・男性)に話を聞いた。
「私が誘われたのは、コンサルティング会社を名乗る男性でした。あとから会社を開業したことにして、休業協力金を申請し、会社のサイトと帳簿を作ってしまうという話でした。断りましたが、申請準備は10分もあればできてしまい、諸費用かかっても20万近く手元に残るというのは衝撃でしたね」