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コロナ対策がもたらすメリットとは。保守的だった企業に変化が

ビジネス

コロナ対策によって享受できるメリットとは

 こうして新型コロナウイルス対策を機会に「様々な問題へのアクセスが一般開放されること」のメリットを多くの人が実感するかもしれない。

 経営学研究の中には「研究者・開発者が長年解けなかった問題を一般公募したらあっという間に解ける」という報告もあり(マサチューセッツ工科大学Eric von Hippel教授が唱えるユーザーイノベーション理論)、今後オープン化を利用した新しいビジネスの進め方が浸透していく可能性がある。

 もうひとつ、新型コロナウイルス対策を通じて、既存の業務の見直しと新技術導入の促進が進むということも考えられる。読者の中でも、これまで保守的だった企業がZoomなどを急速に利用するようになり、ハンコ中心の稟議が簡略化されたという体験をした人も多いだろう。

次々と実行されていく改革案

オンライン会議

 IT音痴を公言してはばからなかった上司がZoom飲み会を楽しむなど、ほんの少し前までは信じられなかったことだ。これ以外にも、医療機関の受診のオンライン化など、これまで進まなかった改革が急激に実現されてきている。

 オープン化と新技術の導入は、危機への対応のために猫の手も借りたいという今の状況だからこそ実現されている。細かいケチをつけていられないからこそ、これまで企業や社会が後回しにしていた改革案が次々と実行されているのだ。

 新しい試みによって新型コロナウイルスという社会問題を解決すること(イノベーションを実現すること)自体が個人・組織・社会にとって大きな学習機会となる。

 社会全体がこうした問題解決に習熟することで、新型コロナウイルスを乗り越えた後にはイノベーション創出力が向上するとするかもしれない。そう前向きにとらえてみれば不安な現状にも希望が持てるだろう。

<TEXT/岩尾俊兵>

慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県生まれ、東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程修了、東京大学史上初の博士(経営学)を授与され、2021年より現職。第37回組織学会高宮賞著書部門、第22回日本生産管理学会賞理論書部門、第36回組織学会高宮賞論文部門受賞。近刊に『日本“式”経営の逆襲』(日本経済新聞出版) Twitter:@iwaoshumpei

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