自分の未来をコントロールするには?文豪・森鷗外に学ぶ「カオス理論」
岡田が投げた石が雁に的中
では、青魚の味噌煮込みがどうしたというのか。まず、寄宿舎での食事として青魚の味噌煮込みが出る。語り部である「僕」は青魚の味噌煮込みが大嫌いというのでこれを食べない。
そして岡田を誘って外へ出かける。すると柔術が好きな体育会系の石原という学生とばったり出くわす。石原は雁に石を投げようと誘う。岡田はそんなかわいそうなことはしたくないと思うが、石原が今にも石を投げつけそうなので、それなら自分が雁の近くに石を投げて(驚かせて)石原から逃がしてやろうとする。
が、岡田の投げた石は見事に雁にあたってしまう。雁はそのまま死んでしまう。石原その雁を捕まえにいき、雁をごちそうするという。そして、その雁を料理して3人で朝まで酒を飲むことになってしまう。
結局お玉との間には何も起こらなかった
しかも、岡田は翌日からドイツ留学のために家を出ないといけない。こうしてついにお玉と岡田は千載一遇のチャンスを逃し、縁が途切れてしまったのである。物語もここでふいに、あっけなく終わる。
あのとき青魚の味噌煮込みが出ていなければ、あのとき石原と話さなければ、あのとき雁に石が当たらなければ……、お玉と岡田は結ばれていたのだろうか。
このような、小さなきっかけが次々と影響しあい大きな結果の相違を生む状況は、カオス現象という。映画『バタフライエフェクト』でその存在を知った人も多いだろう。
もう少し身近な例で考えてみる。あの入試であの問題をミスしなければ、あのとき学部選択を間違えなければ、あのときあの面接に寝坊しなければ、あのとき内定を承諾しなければ……、自分はどうなっただろうと考えたことがある人も多いだろう。