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六本木、銀座…ドン・キホーテは、なぜ一等地に出店するのか?

ビジネス

情報収集のための「高い家賃」

「激安」を追及していけばおのずと売上も伸びていた。しかし、ドン・キホーテが成長するにつれて、対象とする顧客層を拡大する必要がでてきた。「ああ、だから一等地に出店したのね」というのは早計だ。

 実際には、顧客層を拡大するにあたって、ドン・キホーテには高級住宅地に居住するような層の購買行動についてのデータを持っていないという問題があった。一等地の店舗の利用者はこれまで主要なお客ではなかった人たちであり、こうした人たちを今後お客にするための情報収集自体に価値があるのである。

 情報を得るには、マーケティング会社から不完全なデータを買うか、自社でデータを収集するしかない。こうした事情から、多少高い家賃を支払っても、次の戦略のための情報料だと考えれば安いものなのである。

 もうひとつ、一回ドン・キホーテで購買したら、次はドン・キホーテの他店での購入や通販にも抵抗がなくなる(フット・イン・ドア効果)という点を狙っている点も指摘できるだろう。こうして、これまで顧客ではなかった層の情報を手に入れ、さらに購買への抵抗をなくしていくことで、すべての消費者を射程に入れた販売戦略が可能となるのである。

 ドン・キホーテが「激安」の殿堂から「驚安」の殿堂へと変化しようとする中で、一等地への出店は必要な行動だったともいえる。

<TEXT/岩尾俊兵>

慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県生まれ、東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程修了、東京大学史上初の博士(経営学)を授与され、2021年より現職。第37回組織学会高宮賞著書部門、第22回日本生産管理学会賞理論書部門、第36回組織学会高宮賞論文部門受賞。近刊に『日本“式”経営の逆襲』(日本経済新聞出版) Twitter:@iwaoshumpei

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