家電量販店の休憩室で見たものは…?女性派遣社員がギョッとした理由
さらに彼女をギョッとさせた出来事とは…
重たい雰囲気のなかで休憩時間なのに気の休まらない時間を送った並木さん。なんとかやり過ごし、待ち望んでいた業務時間がやってきましたが、「さっきの毒気に当てられ、やる気を少しそがれてしまっていた」と言います。
そして、地上の売り場へと戻るエスカレーターにぼんやりと乗っていたところ、何か声が聞こえてきたらしく……。
「たまたま、エスカレーターで前に乗っている販売員の方が独りごとを言っているのが聞こえたんです。何を言っているのかよくよく聞いてみると、『頑張ろう』とか、『やるぞ』って言っているんです。
しかもこれ、数日勤務してわかったのですが、この方に限った話じゃなく販売員やメーカーの方たちの多くがエスカレーターを上りながら気合を入れ直しているんです。人前に立つという職業上仕方がないことなのかもしれませんが、びっくりしましたね」
店舗研修の評価にもマイナスの影響
エスカレーターがやる気スイッチになっている。実際、並木さんは休憩中に死んだ眼をした販売員の方が売り場に立った途端、その眼に活力を取り戻し元気一杯でお客様対応している様子を何度も見たそうです。結局、業務にも集中できず、店舗研修の評価は芳しくないものでした。
「せっかく今までの研修で頑張ってきたのに、最後の評価が良くなかったのは残念でした。業務に集中できなかった自分の責任なんですけど。でも希望の部署には結局は入れたので良かったです。
それにしても、あんなにON/OFFの落差が激しい仕事はアルバイト先を含めても初めてでした。誰に迷惑をかけているわけでもないですし、パフォーマンスも向上されていたので問題ないんですけど、ただ今思い出しても異様だったなぁとは感じます」
人前に立つ仕事はその一挙一動に注目されているようで、それだけで大きなストレスを感じてしまうもの。接客のプロは、休憩室では完全にスイッチがOFFになっているくらいがちょうどいいのかもしれません。
― 特集 新型コロナ・若者の憂鬱 ―
<TEXT/山田星人 イラスト/デザイア恵利>