ストロング系、市販薬…身近な依存症。専門家が語る「最も深刻な薬は…」
いい薬物・悪い薬物ではなく、使い方の問題
――違法薬物に限らず、依存につながりやすいものは多いと思います。どのように付き合っていけばよいのでしょうか。
松本:人間は本当に薬物を使う動物です。一部の動物は地表で腐った果実が発酵してできたお酒を飲んでいる、という報告があります。ですが、自然界の植物の中から有効成分を抽出・生成したり、人工的に化学合成をしたりして薬物を作る動物は人間しかいません。
人間はその能力があったからこそ、医薬品を開発して多くの病気を克服し、寿命を伸ばしてきました。また、病気に限らず、もっと喧嘩が起きてもおかしくないのに、酒を飲んで騒ぎ、意見や価値観の違いをうやむやにして、表向きはコミュニティの和を保ってきた面も相当にある。
だから、薬物がすべて悪いとは言えないのです。よい薬物と悪い薬物があるというよりはいい使い方、悪い使い方があるのだと思います。
――我々が悪い使い方をしてしまっている薬物はなんでしょうか?
松本:例えば、今一番子供たちの中で深刻なのは咳止め等の市販薬依存です。ドラッグストアにいけばいくらでも手に入ってしまう。ネットでの市販薬販売も規制緩和されていて入手が容易です。
医師が処方する薬だって安心できるものばかりではありません。睡眠薬や安定剤を乱用して依存になる人もいます。すべての薬を警戒しなくてはいけないし、薬を正しく使うための教育も必要になっています。
ストロング系のアルコールに警鐘
――先生は以前から度数が10度近いストロング系のアルコールに警鐘を鳴らしています。
松本:お酒ひとつとっても立派な薬物です。最近特に気になっているのがストロング系のアルコール飲料。ビールの倍近い度数があるのに、ビールかそれ以上の速さで飲んでしまう。
そうすると血中のアルコール濃度が急激に上がってしまいます。これは依存症という点、健康被害や様々なトラブルという点から見ても危険です。
それからカフェインの入ったエナジードリンク。カフェインはすぐに耐性が生じるため、どんどん飲む量が増えていく。中にはドリンクで足りず薬局でカフェインの錠剤を買う人もいます。こうしたドリンクに頼ることは本質的に言えば元気の前借りです。必ず大きな借金を背負うハメになります。
しかも若い人たちがよくいく居酒屋ではエナジードリンクとアルコール飲料を割った飲み物がある。