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日本発のスニーカーブランドが「ひらがな推し」になったワケ

ビジネス

「おしゃれは足元から」とよく言われるが、スニーカーは様々なファッションコーデに合わせやすく、アクセントを効かせるのに最適だ。

 最近ではスポーティーなものだけでなく、カラーバリエーションに富んだものや履き心地、軽さを意識したもの、高級志向のものまで、数多くのスニーカーが販売されている。

サンガッチョ

サンガッチョジャパンの「ひらがなスニーカー」

 ライフスタイルが多様化するにつれ、スニーカーに求めるニーズも幅広くなったことが、スニーカーブームに拍車をかけた一因だろう。そんな中、SNSを中心に話題沸騰のスニーカーブランドがある。

 ひらがなのロゴが特徴的な「ひらがなスニーカー」を展開する「靴工房サンガッチョ(SANGACIO)」は、ハンドメイドにこだわり、一足ずつ丹精込めてスニーカーを作っているブラントだ。

 大量生産ではなく、ハンドメイド品質を重視することから、数量限定生産を行っており、履き心地の良さやオリジナリティ溢れるデザインは、SNSを中心に人気を得ている。

 同ブランドのデザイナーであり、サンガッチョジャパン株式会社 代表取締役の前田一輝氏に、ひらがなスニーカーを生み出した背景と、ブランドのファン創出における取り組みについて伺った。

先輩が履いていたスニーカーに衝撃

 前田氏がハンドメイドスニーカーを手がけるようになったのは、幼い頃の原体験があるという。

「小学校6年の時に、先輩が履いていたバッシュが、とてもカッコよくて衝撃を受けました。それ以来、スニーカーの虜になりましたね。これまで20年以上スニーカーを集めてきて、のべ200~300足に上ると思います」(前田氏、以下同)

 まさに、大がつくほどスニーカーフリークである前田氏。だが、スニーカーの勉強を始めたのは30歳手前に差し掛かったころ。それまではカフェやパティスリー、ベーカリーといった食専門の社会人向けスクールを運営する会社でコンサルタントとしての実務を積んでいた。

「ひと通りの業務や経験をこなすなか、30歳手前に差し掛かった頃に『自分で社長になる番だ』と決心したのです。じゃあ、何をやろうかと考えたときに、一番自分が情熱を捧げるものはスニーカーだったので、まずは靴作りを学ぼうと。そこで、紳士靴の製作技術を学びに専門学校に通うようになりました」

イタリアで気づいた「ひらがな」の優位性

サンガッチョ

オフィスに飾られたスニーカーの数々

 神戸で紳士靴の製作技術を学んだ後、さらに知識や技術に磨きをかけるべく、ファッションの本場であるイタリアで修行を積む。

「イタリアでは紳士靴のほか、パンプスやサンダルといったシューズのデザインも学んでいました。このとき感じたのは『オーダメイドのスニーカーがあればいいのに』ということ。履き心地がよく、自分にぴったりくるスニーカーを作れたら、『履くお客様も喜ぶのでは』と思ったのです」

 この経験が、のちにハンドメイドのスニーカーを作るきっかけになる。さらに「留学中の金欠を解決するための小遣い稼ぎ」からアイディアの着想を得たことも。

「道端で日本人向けの街案内をしていたのです。学校の隣のクラスが美術を教えていたことから、油絵を借りて描いた標識を掲げていましたが、日本人よりも外国人のほうが興味を示してくるんです。そこで改めて『ひらがなは日本固有のものである』と気づきました。

 漢字は中国から伝来したものですが、ひらがなは日本固有のもの。ここにヒントを得て、もっと日本のアイデンティティを持ったスニーカーを作りたいと思うようになりました」

 日本人は、ひらがなを「日本語の意味」として捉えてしまうが、海外の人は「シェイプ(形)」と捉え、そのデザイン性に注目していた。また、日本人が履くスニーカーはナイキやアディダス、コンバースなど海外ブランドがほとんどで、日本発のスニーカーがなかったことも、ひらがなスニーカー誕生の後押しになったという。

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