高卒リーマンが管理職に昇進したら、平社員の頃より絶望した理由
昇進したら残業代がつかずに給料ダウン
こうしてめでたく事務所のマネージャーになった安倍さんですが、実は今、その昇進を悔やんでいるといいます。いったいなぜなのでしょうか。
「管理職に昇進した現在のほうが、平社員の時よりも給料が低くなってしまったんです。平社員の時は売上にノルマなどなく、基本的に毎月同じ給料をもらい、そこに残業手当が上乗せされるような形でした。しかし、現在の管理職の給与には残業代がつかない。
その分は、管理職手当がついているのですが、これが今までもらっていたみなし残業代よりも低かったんです」
管理職になると残業代がつかなくなることは世間でもよくある不満です。たしかに労働基準法でいうところの「管理監督者」になると、残業代の支払いは必要ありません。しかし、深夜勤務(午後10時~午前5時)をしたら、管理職であっても法的には深夜勤務手当を支払わないといけません。ところが、これを支払っていない会社は多く、安倍さんの会社もそうでした。
また、安倍さんの会社では「管理職になればインセンティブがつく」と言われていたそう。しかし、そのインセンティブのシステムに問題がありました。
インセンティブシステムの問題点とは?
「事務所全体の売上がよければ、管理職にはインセンティブがつくシステムだったのですが、僕一人の努力でインセンティブがつくほど、事務所の仕組みはできあがっていませんでした。そして、インセンティブがまったくつかないときは、給料が平社員のときよりも低くなってしまうんです。
それでいて、部下のメンターとしての役割や売上の管理、上司への事務所全体の報告など、業務は今までより格段に増えました。この給料で、どうやって仕事のモチベーションを保っていけばいいのかまったくわかりません。
一度本社にも訴えましたが、僕の場合は高卒なので、もともとの基本給も安いので仕方がないと言われました。さらに昇進すれば給与も上がるんでしょうけど、それも“当たりの取引先”を担当できるかどうかにかかっていると言われ、絶望しています」
安倍さんの会社のケースのように、基本給を安くすることで他の福利厚生をよくし、「福利厚生完備」を謳う企業もあるようです。また、管理職になることで労働基準法の扱いが異なることを上手く利用してくる企業もあります。昇進の際は、実際に手元に残る給与額をしっかり聞いてから受け入れを検討したほうがいいかもしれません。
<取材・文/ミクニシオリ>