私用車が営業途中に事故で大破!マイカーの業務利用に潜むリスク
保険の有無・会社の責任はどこにある?
「異動して4か月ほど経った頃だったと思います。地元の交差点で右折した際、直進してきた車と衝突してしまったのです。車はボンネットがえぐれてしまい一目で廃車と分かる状態でした」
交差点には信号があったのでどちらかが赤信号を無視して進入したことになりますが、どちらの車にもドライブレコーダーがなく、目撃者もいません。幸い、事故相手の運転手には目立った怪我がなかったものの、この事故で田原さんは自分の業務で使う車に対する認識が甘かったことを痛感したといいます。
「まず、親の車を運転していたときに『保険は下りるのか』という基本的な知識が抜けていたことに気がつきました。私は当時、保険料を支払っていなかったので、もし適用外だったら……と考えると、正直、足がすくみましたね。
あとは会社とマイカー(正式には親の車)を業務で使用する際の書面上の手続きをほとんどしていなかったことです。通勤に使用するための書類は提出したのですが、それだけで十分だったのか、事故を起こしてから不安になりました」
保険は下りたが、会社との信頼関係が崩壊
リスクに気づかずに、なんとなく親の車を営業車として運転していた田原さん。その結果はどうだったのでしょうか。
「結果からいうと、親が年齢26歳以上の家族全員に適用される保険に入っていてくれたおかげで、保険は下りました。実況見分や保険会社とのやりとりの結果、どっちが悪いか分からないまま、5対5になってしまったので、保険が下りて本当によかったと思います」
それでも、田原さんが使っていた親の車は廃車になって新車を買わざるを得なくなってしまいました。新車代は保険会社から半額以上出たものの、親から「保険料が高くなった」とチクチク言われる日々。また、車がないと仕事ができないことから、急遽、格安の軽自動車の中古車をローン購入しました。
「保険料の上積み分は、今も私が支払っています。頭金が後少しで貯まりそうだったのに、夢の新車は遠ざかってしまいましたね(笑)。会社の役員からは心配の声をかけてもらいはしましたが、そのほかの支援はまったくありませんでした。一応、首を痛めて病院にも行ったりはしたのですが……。『労災とか降りないんですか?』と聞きたくても、赴任早々、事故を起こしてしまった負い目もあって訴えきれなかったです。事故をおこしてしまったのは僕の責任ですし……」
自責の念はあるものの、書類を用意していなかった会社とその後の空々しい対応に不信感を募らせた田原さんは、結局、事故から1年後に退職してしまいました。マイカーを出張や業務に使う人はもちろん、社用車を足に使っている人も一度社内規定を確認してみてはいかがでしょうか。意外な抜け穴やリスクが潜んでいるのかもしれません。
― 特集・車で得した話/損した話 ―
<取材・文/藤冨啓之>