フジロック、客のマナー低下はなぜ起きた?フェス愛好家が語る
ゴミ捨てや場所取りなどのマナーが低下
――今はそういう人が減っていると?
津田:そういう“おせっかい”な人たちが少なくなった気がするんですけど、それはある意味でいえばフェスが定着したことの裏返しでもあるんですよね。今年特に問題になった椅子の場所取りですが、SNSを見ていたら単純にルールを知らなかったと言っている人もいました。例えばフジロックのホームページには一部のエリアで椅子の使用の禁止が明記されています。ただ現地ではそういう注意書きのある看板や放送はほとんどないし、ルールを守れていない人が一定数いるのも事実。
ほかにもごみ捨てなど、そういったことを管理しないのを主催側の怠慢だと言う人もいます。もちろん、初参加で何も分かっていない人や、日本語が読めない外国人の参加も増えてきたので、最低限のアナウンスは必要とは思いますが、何でもルールを作って、規制してしまうのもフェス、特にフジロックが大切にしてきたマインドとはずれていく気もします。
――単にルールを作ればいいという問題ではないのですね。
津田:はい。でも、誰かが言わないといけない。もちろん僕のようにこういう場面を与えてもらって、意見を言わせてもらえる人は賛否を恐れずに発言すべきだし、主催者以外にも、フジロックでよく使われている椅子のブランドやアウトドアブランドもなんらかのアクションを起こしてもいいんじゃないかと思っています。
自分たち主導でもっと情報発信をするとか、主催側と一緒に何かをするとか。大変かもしれないけれど、企業ブランドのイメージも良くなると思います。
「昔はよかった」とは言いたくない
――主催者以外のアクションも必要だと。
津田:何か課題があったら、それを解決しようと工夫する人たちのアクションがフェスを発展させてきた経緯もあるので、主催者だけでなく、参加者、企業、メディア、ボランティアなど、どんな角度からでも自分たち主導でアクションしてみるというのがいいかと思います。
例えば、そもそもフジロックでイスが持ち込まれたのも、主催者が椅子を使ってくださいと言ったわけではなく「フジロックは座る場所が少ないから自分たちでイスを持ち込もうよ」という工夫からはじまったと思うんです。だから何かできることから工夫してやってみる。
新しく入ってきた層のせいにしてしまうのは簡単だけど、実はそれだけが問題じゃなくて、僕らみたいなフジロック常連の人たちにも問題というか、もっとできることはあるはずで。もっとしっかり情報を伝えていくとか、何か働きかけをするとか。個人的な見解ですが、自分も含め、フジロックがあることに慣れてしまって、自分たちはマナーを守っていても、それをちゃんと若い世代や新しい層に伝えていくみたいなことを以前より怠っていると思っているんです。
――津田さん自身、何か実践していることはありますか?
津田:本当に個人的な話なのですが、数年前からフジロックに椅子を持ち込むのを辞めてみたんですよ。そうしてみると、他のフェスに比べて常設のベンチが少ないってのを改めて感じたりもして。ただ単に椅子の場所取りのことを批判するのではなくて、実際に参加者目線にたってみると、もっとフェス側でもこうしたほうがいいとか、意見を持てるようになると思うんです。
そうやって何かひとつアクションしてみることが新しい発見につながるし、フェスの醍醐味だとも思います。ゴミなどのマナーでも、SNSで不満を言うだけより、目の前のゴミを拾ったほうが現実的にゴミも一つ減るわけで。
「昔はよかった」というのだけは言いたくない。それって一番の怠慢だし、単純にかっこわるい。だから目の前のことを楽しんで、何か問題があったら周りを巻き込んで考える。そして小さくてもいいから行動する。そういう姿勢みたいなものを僕はフェスティバルというカルチャーから学んだので。