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ジャニー喜多川氏、名曲を生んだプロデュース秘話 突然の電話が運命を変える

コラム

直前に入れ替わった「A面とB面」

 新曲は、田原の主演ドラマ『教師びんびん物語』の主題歌になると決まっていた。その候補として、『がんばれよナ先生』という曲が有力だったという。木野正人はこう話している。

〈直前に急遽、A面とB面が替わった記憶があります。『抱きしめてTONIGHT』の仮歌を聴いたとき、まだミックスダウンされていないこともあってか、踊るような曲には聞こえなかったのも確かです〉(2018年6月発行『田原俊彦論』)

 最終的に、ジャニー氏はドラマと合いそうな『がんばれよナ先生』をB面に、田原のダンス力をより一層発揮できそうな『抱きしめてTONIGHT』をA面に選択した。

 田原と乃生、木野の踊りは絶妙な調和を見せ、視聴者の心を掴んだ。

アイドル出身唯一の年間1位を獲得

ダンス 踊り

 当時の人気歌番組『ザ・ベストテン』(TBS系)では『さらば・・夏』以来4年8ヶ月ぶりの1位に輝き、14週に渡ってランクイン。松田聖子や中森明菜、近藤真彦も達成できなかったアイドル出身唯一の年間1位という快挙も達成した。

 低迷から鮮やかな復活を遂げた背景には、『教師びんびん物語』の高視聴率だけでなく、田原俊彦の長年に渡る努力、ジャニー氏のバックダンサーや曲選定というプロデュース力が重なっていた。

 このヒットによって、“ジャニーズ事務所のタレントがドラマの主演と主題歌を兼ねる”というスタイルが確立していった。そういう意味でも、『抱きしめてTONIGHT』は芸能史に残る1曲なのである。

<TEXT/岡野誠>

ライター・芸能研究家。本人へのインタビューや関係者への取材、膨大な資料で構成する著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)は3刷に。ジャニー氏と田原がレコーディング時に歌詞について意見を戦わせた逸話も綴っている

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