吉本騒動で考える、サラリーマンの防衛術 。「クビ」「録音NG」と言われたら?
吉本興業の岡本昭彦社長が7月22日に行った記者会見は衝撃的なものだった。ほとんどの日本人が知っている有名企業のトップが、会見でしどろもどろになったり、「全員クビや」などの発言を「冗談だった」と釈明したのだ。
こうした態度に所属芸人だけなく、弁護士などからも企業体質やガバナンスを疑問視する声があがった。それを受け、吉本興業は7月25日、経営アドバイザリー委員会を設置して、体制を見直すことを発表した。
お笑い芸人は吉本興業の社員ではなく個人事業主なので、一般企業の労使関係にそのまま当てはめることはできないが、一般企業に勤めるサラリーマンが似たような状況に遭遇した場合、どうしたらよいか。特定社会保険労務士、澤上貴子氏に聞いた。
退職届を出したのに「冗談」だったら?
そもそも岡本社長は質疑応答で、雨上がり決死隊・宮迫博之、ロンドンブーツ1号2号・田村亮が明かした「テープを回してないやろな」「(記者会見をしたら)全員クビにするぞ」といった疑惑について、「場を和ませるための冗談だった」と釈明。
詐欺集団の被害者への謝罪の意思が伝わってこなかったので、「親が子どもに言うような」感覚で「ええ加減にせえ」という意図だったと、岡本社長は説明した。
一般企業で「(会社)辞めろ!」と言われて退職届を出したあとで、「冗談だ」と言われてしまった場合、どうなるのか。特定社会保険労務士、澤上氏はこう語る。
「パワハラまがいの言葉を浴びせられ、辞めろと言われて退職届を出してしまった後に、その上司が『冗談だった』と弁解した場合(仮に弁解がなくても)、退職届を出したのだから本当に会社を辞めなければならないかと言うと、そうではありません。
上司からの強要(無理強い)により退職届を出した場合は、退職届を取消しにできる場合があります。また上司の話などから、労働者が自らの行為が懲戒解雇になると誤解して退職届を提出して自主退職し、会社もその誤解を知っていながら承認した時などは、退職届は無効になります」
こっそり録音した音源は有効。ただし…
また、岡本社長が「(録音)テープ回してないやろな」と発言したとされるが、上司などとの面談を、こっそりテープで録音した音源は法的に有効か?
「会話の当事者同士の話であれば(不法行為となり得るリスクは、全くゼロではありませんが)、相手に無断で録音したとしてもただちに違法とまでは言えません。また、証拠としての能力もあるとされています。
ただし、録音の手段方法が反社会的である場合はその限りではありません。また、録音したものをどう使うのかは別の話で、安易にSNSなどで公開するなどの行為は損害賠償請求の対象となり得るので注意が必要です」