No.1ホストが握る寿司屋が「ミルクティー」をお客に出す理由
ホストとしての給料は月100万円。でも…
そんなSHUNさんの一日は超ハード。まず昼過ぎに「へいらっしゃい」に出勤し、寿司の仕込みから仕事が始まります。そのまま19時30分の開店からカウンターで寿司を握り、21時の閉店後、すぐ店を出て着替え、22時にはホストクラブに出勤します。
「寿司屋では割烹着ですが、ホストクラブではスーツを着用しています。寿司屋の退勤からホストの出勤までは1時間もないですが、割烹着を脱いだ後はしっかりヘアセットをして、ホストとしての自分に“メンタルスイッチ”を切り替えます。寿司屋とホストでは、同じドリンクでも値段が全然違うのだから、僕自身同じマインドでいいわけがないんです」
その後、24時までホストとして働くSHUNさん。ホストと寿司屋の大将として働きづめのようですが、下世話な話、一体いくら稼いでいるのでしょうか?
「実は、寿司屋はほとんど儲かっていません。仕込みにもお金がかかるし、ネタも日持ちしませんから。ホストクラブでは月100万円くらいを賃金としてもらっていますが、この中から女性たちと食事に行ったり、誕生日のプレゼントを買ったりするので、手元にはそんなに残らないんです(笑)」
「ホストが握る寿司が美味しいのか?」
SHUNさんは自身を指名してくれるお客さんには、お金を出し渋るようなことは絶対にしないのだそう。こういった気遣いの深さも、No.1ホストに君臨できる理由かもしれません。
また「ホストが握る寿司が美味しいのか?」という穿った見方に対して、あくまでもポジティブです。
「水商売には批判もつきものです。この寿司屋も『ホストなんかが握る寿司が本当に美味しいのか?』という声もあるかもしれません……ただ、一度訪れていただいて、みなさんが予想していたより美味しい寿司が出てきたら、いつも以上に心に残るとおもいませんか?」
良いホストと、板前には共通点がある
指名がない頃も、女性の気持ちを理解するために満員電車に乗ったり、歌舞伎町を歩き回って女性たちを観察したりしたのだそう。「こうした絶え間ない努力が成功の秘訣」と、SHUNさんは語ります。
「いいホストといい板前には共通点があるんです。それはどちらも“いい男であること”。ホストでは女性を気遣う会話のセンスや思いやりが重要ですし、女性に来ていただける寿司屋にも、気遣いと清潔感が必要です。なかにはこうした努力を大変だと思う人もいますが、僕の場合、好きなことを仕事にしたこともあり、どちらの努力も自然とできてしまうんです」
昨今は男らしい男性はモテない傾向にあり、中性的で主張の薄い“ジェンダーレス男子”なる若者も増えていますが、歌舞伎町のホストでNo,1を張る男はやっぱり“いい男”でした。「10年後も現役としてホストをやっていたい」と笑顔で語る、SHUNさんも10年後には42歳。どんないい男になっているのか……気になります。
<取材・文/ミクニシオリ 撮影/スギゾー。>