洋画の吹き替えや宣伝に芸人が起用される謎。「MIB」にも賛否の声が
昨今では、お笑い芸人がドラマや映画などに出演し、その演技力が評価されることも多くなってきた。
しかし、いまだに賛否両論が巻き起こるのが、お笑い芸人の吹き替え声優だ。俳優業が同じ舞台上での表現であるのに対し、声だけの演技は本業の声優と比べると技術不足が否めないため、どうしても見劣りしてしまう。過去にもお笑い芸人のキャスティングを巡って、ネットで議論が起きていた。
人気シリーズの7年ぶりとなる新作映画『メン・イン・ブラック:インターナショナル』が6月14日日米同時公開されるが、この日本語吹き替え版の声優に、吉本芸人46人からなるアイドルグループ・吉本坂46の「全46人が起用」と発表され、SNSで話題になっている。
「なぜプロの声優ではない?」
本作『メン・イン・ブラック:インターナショナル』日本語吹替版の主要キャストには、杉田智和さん、高島雅羅さん、磯部勉さんといった実力派声優が名を連ねており、それ以外のキャストの吹き替えにも本職の声優が起用されている。
吉本坂46のメンバーは先日、「46人グループ全員が吹替声優を務める」ことが発表された。具体的な配役は、まだ明かされてなく、端役やエイリアンの声優を担当するかもしれない。しかし、ファンからは「なぜプロの声優ではなく、芸人を起用したのか?」などと疑問の声が殺到。
もちろん、なかには「楽しそうな企画ですね!」などの好意的な声もあるが、本作公式アカウントへの反応を見る限り、圧倒的に少数のようだ。
さらに、本作の日本語吹き替え版の主題歌にも、吉本坂46のセカンドシングル『今夜はええやん』が決定。これにも「たくさんのアーティスト、バンドがいるなかなんでコレ?」といった不満が出ている。
宣伝・声優に芸人を起用するのは苦肉の策
もちろん、すべてのお笑い芸人やタレントの吹き替えに問題があるわけではない。こうした“知名度のある”タレントの起用によって、洋画に関心のない人たちにも作品を届けようとする配給・広告代理店側の意図もわかる。映画宣伝に長年携わってきた業界関係者の男性・Aさんはこう語る。
「日本人が映画を見る本数は、年に約1本という有名なデータがあります。なぜお笑い芸人が洋画のイベントに起用されるのかというと、映画に興味がない層にも、少しでも作品を認知してほしいという観点から、お茶の間で活躍している芸人さんにオファーして、協力いただいているのです」
特にお笑い芸人の起用については、さまざまなメリットも大きいという。
「とりわけ洋画作品はキャストの来日がなかったり、レオナルド・ディカプリオといった知名度のあるキャストではない限り、一部にしか興味を持ってもらえません。それが芸能人の方だと、ギャラも安く抑えられるし、もともとの知名度があるのでワイドショーなどで取り上げられやすい。また、俳優としてではなく、声優のみの起用なら、スケジュールも確保しやすいので、メリットが多い印象です」