2年で自殺者35人、奴隷扱い…驚くべき世界の「ブラック企業」4社
今年4月から施行された働き方改革関連法で、これまで“青天井”だった時間外労働に上限を定め、違反企業には罰則が課されることになった。世界的に見ても、日本の企業は労働時間は長く、従業員が精神疾患を発症したり、過労死を招く要因となっている。
2002年には日本発の外国語として「過労死(karoshi)」が、英語の辞書に掲載されるなど、もはや日本特有の問題と言っても過言ではない、この問題。
記憶に新しいところでは、2013年にはNHKで女性記者(当時31)が、2015年には電通の女性社員(当時24)が過労自殺するなど社会的な議論が巻き起きた。しかし、日本のブラック企業もびっくりの事件が、フランスで起きた。フランスの大手通信会社で、わずか2年の間に従業員35人が相次いで自殺したのだ。
2年で35人が相次いで自殺した、仏通信大手
2008~2009年の間に、従業員35人が相次いで自殺したのは、フランスの通信大手「旧フランス・テレコム(現在の社名はオレンジ)」。5月6日からは、当時の最高経営責任者(CEO)であるディディエ・ロンバールら経営陣に、「モラルハラスメント」の容疑を問う裁判が始まっている。
そもそも日本人にはあまり馴染みのないフランス・テレコムとは、どのような会社なのか。同社は、社員約10万人を擁するフランスの主要な電気通信事業者で、その起源はフランス革命のさなか、各地を結ぶために作られた情報通信網を、フランス政府が吸収合併・国営化したときにまでさかのぼる。
1988年1月には、電信電話総局からフランス・テレコムに民営化されたが、90年代後半からは民営化に伴ったリストラや組織再編が行われ、自殺者が相次いだ。労組側はストで対抗するほか、議会の調査を求めるなどフランス国内で政治問題と化していた。
主に中高年の自殺が多かったそうだが、コールセンターに異動になった男性が高速道路から投身自殺したり、男性が降格を命じられた直後に割腹自殺、さらには営業不振を責められた取次店長の女性が店内で服毒自殺、女性従業員が同僚たちの目の前で飛び降り自殺……と、凄まじい最期を遂げた者もいる。
2013年には、インターネットテレビや携帯電話などすべての事業分野における統一ブランド「Orange(オレンジ)」に社名を変更した。ハラスメント容疑で捜査対象となったケースは今回が初めてであり、産業界、労働組合、専門家たちの注目が集まっている。
女性160万人の集団訴訟の可能性もあったウォルマート
世界最大のスーパーマーケットチェーンを展開し、日本では大手スーパー・西友を傘下に置く「ウォルマート」。本国アメリカや日本だけでなく、アジア、ヨーロッパなど世界中に従業員がいるグローバルカンパニーだが、2000年以降は数多くの労働問題が表面化している。
2000年代以降、「全米史上最大の性差別集団訴訟」として注目を集めたのが、ウォルマートの性差別訴訟だ。きっかけは、2001年に6人の女性従業員が「給与・昇進・職業教育などに関して男女差別があり損害を被った」として提訴したことだった。結局、2011年に最高裁が「集団訴訟を認めない」判決を下したが、当初は、原告がウォルマートで働く女性従業員160万人にまで膨らむ可能性があった。
これ以外にも、2012年には、イリノイ州のウォールマートの倉庫従業員が、不当な賃金と危険な職場環境、人種や性差別などに抗議して21日間のストを起こしたこともある(その後、ウォルマート側は待遇改善を約束し、労働者側と和解した)。
さらに米国環境保護庁(EPA)の発表によると、ウォルマートは、かねてより有害物質の排出やゴミの不正処分なども行っていた。ここ数年、従業員の賃上げを発表するなど待遇改善に力を入れはじめたが、依然として問題は根深い。