柄本佑が語る、親父と弟との舞台稽古「2世俳優」であることの実感
名優・柄本明さん演出のもと、息子の佑さんと時生さんが出演した2017年の舞台「ゴドーを待ちながら」の稽古場に密着したドキュメンタリー『柄本家のゴドー』が5月11から下北沢トリウッドにて公開されます。
昨年の映画での演技により、主演男優賞に輝いた毎日映画コンクールとキネマ旬報ベスト・テンでは、主演女優賞の安藤サクラさんと、両賞で初となる夫婦W受賞に輝いたことも話題を集めた柄本家の長男、柄本佑さん(32)にお話を伺いました。
柄本佑が語る「ゴドー」公演のきっかけ
――2008年から時生さんと演劇ユニット「ET×2」を組まれています。2014年に最初の『ゴドーを待ちながら』を、2017年には、お父さんの柄本明さん演出のもと、本ドキュメンタリーが収録された2回目の『ゴドーを待ちながら』公演しました。
柄本佑(以下、佑):2014年のときは劇団の戸辺俊介さんが演出してくれていたのですが、実家の地下で稽古をしていたら、まあ、親父が何度も降りてくるんです。今までも時生と稽古をしていると様子を見に来ることは1公演で1、2回ありましたが、ゴドーのときは5、6回来ていたんです。
それで、公演が終わったあと、時生と「ゴドーは長くやっていきたいね」と話をしたときに、「親父演出したいんじゃないかな」という話になり、「自分たちが若いうちに1度やってもらったほうがいいだろう」と、2人でお願いしました。
――明さんの反応は?
佑:案の定、親父のなかでは美術プランがもうできていたらしくて。本人もゴドーの舞台をやっていますが(2000年、石橋蓮司と共演)、そのときから舞台の奥の壁にチョークで木を1本書いただけで、「こういうふうにゴドーをやれたらいいな」という発想はあったようです。ただ、その舞台の演出を息子たちにお願いされることまで考えていたかはわかりませんが。
カメラが入ることに父親は大喜びだった
――ドキュメンタリーで映し出される稽古場は、演者さんにとっては裏の姿だと思います。
佑:いやぁ、恥ずかしいですよ、正直。山崎(裕)監督とは以前に仕事をしていて、お茶をしていたときに「今度の『ゴドーを待ちながら』の稽古場にはカメラが入ったりするの? 入らないなら、僕が入ってもいい?」と言われたんです。
ただ、そのときは「親父に相談してみます」とだけお答えして、「山崎さんに撮ってもらえるなんて、こんな光栄なことはないけれど、どうだろうなぁ」なんて僕が考えながら、親父に伝えたら大喜びしていました。
――そうなんですか!?
佑:「そうなの? 全然いいよ」って。もう親父の喜んだ顔を見たら、決定ですよね。ただ、それは家族3人でやった記録が残るということではないと思います。もちろん今回、山崎さんが入ってくれたのは、親父と息子2人によるゴドーだったからですが、親父の頭にあったのは「俺の稽古場の記録を残したい!」だったと、確実に思います(笑)。