伸びたヒゲもきっかけに。20代ディレクターが目指す「新しい働き方」
27歳で名古屋から上京。カルチャー格差を実感
――なぜそこまで自分を売り込むのにこだわるのでしょうか?
なかむら:僕、大学も名古屋だったんです。27歳になる年に上京したんですけど、すでに東京にいる人とは大きな差があると思ったんです。彼らは18歳とか22歳とかに東京に来て、いろいろな人間関係を築いてカルチャーを享受している。おそらく一生埋められない。だから、とにかく少しでも巻き返したくて。覚えてもらえるならと思って、「見た目印象強さ」と「フットワークの軽さ」だけは上京当時から維持しています。
例えば、いまだに恒例行事みたいにしているんですが、飲み会に行くと、どんなに酔っていても最後に集合写真を撮るんです。その写真を参加者にプレゼントすると、「ヒゲの写真の人」って印象は残りますよね? こんなたくさん人のいる東京で顔を覚えていただくだけでも万々歳です。とは言いつつも、実際はみんなの楽しそうな姿を撮るのが好きなだけなんですけどね(笑)。
――なかむらさんのインスタを見ると、いつも色彩がきれいな写真が載っていますよね。カメラの勉強をしたのですか?
なかむら:カメラは独学で、誰かに習ったり、学校に通ったりはしていないです。なので、しっかり勉強してきた人からみると物申したくなることも多々あると思います(笑)。
それでも、写真をアップし続けることは心がけています。インスタを見た人が僕や僕の周りのことを知ってくれるようなものになればいいと思って。なので、自分を表現する作品というよりは、写真や写真を撮る行為はコミュニケーションツールのひとつだと思っています。インスタがきっかけで僕の友人に仕事が入ってきたりというのが実際にあるので、写ってくれた人にもメリットがあるようにをできるだけ考えていますね 。
「BuzzFeed Japan」「CanCam」から仕事を依頼されるわけ
――カメラはあくまでコミュニケーションツールなんですね。ただ、そんななかで「BuzzFeed Japan」や「CanCam」のような大手メディアからカメラマンの仕事のオファーがあるのはなぜですか?
なかむら:幸せなことに、単純な写真の技術だけではなく、さまざまな面で評価してくださったり、見守ってくださっている人たちのおかげだと思っています。万能ではないので、得意分野は限られていますが、これからもフォトグラファーを探す際に頭に浮かべていただけるような動き方をしていきたいです。
よく不思議がられるんですが、いただいたご相談も自分には表現しきれないなと感じたら、アウトプットイメージと相性の良さそうなフォトグラファーを繋ぐようにしています。周りのクリエイターの得意分野がなんとなく頭に入っているので、ひとりキャスティング会社のようになっています(笑)。
仕事をするなら、とことんこだわれ!
――いつも友人や仕事仲間の写真がアップされていて、コミュニケーション能力が高いなと感じます……!
なかむら:いえいえ、もともとコミュニケーションは上手な方ではないと思います(笑)。だけど、いろんな人がいる空間で生まれる空気や偶然が好きなので、いろんな場所に“居る”ようにはしています。
機会は自分でも設けるようにしていて、多くの人に出会うなかで見つけた、何かしら「つくるひと」を集めた飲み会は定期的に主催しています。「男会」「女会」と雑に名付けて、男性だけ、女性だけを集めるようにしています。名前の通り、利害関係を抜きにしたゆるいつながりです。上京前にこれだけはやろうと考えていました。
この先、どの事業が生き残って、どの事業が廃れていくかは分かりませんが、何があっても、仕事が回る状態をこの中で作りたいと考えているんです。個人的に「気持ちが良くて、前向きで、地力のある人」が周りに多いと思っているので、数年後、そこだけでビジネスやプロジェクトがしっかり成り立つと思っています。
勝手な僕の理想なので、完全にお節介ですが、参加者にとって「生活や心の支えになるコミュニティ」になればと思い続けています。人と人の間に立っていた人事時代のなごりかもしれません(笑)。
――友人と一緒に仕事をすることは楽しい反面、しがらみや馴れ合いも生まれそうですが。
なかむら:僕は全然、不安ではなくて。仕事上のつながりではない利害関係のない友人だからこそ、意見をぶつけ合える気がしてるんです。その結果、険悪な感じになってしまったとしても、この歳で人を裏切ったりするほうが面倒じゃないですか? だからこそ、とことん付き合って、お互いが納得できるようなものができればと思っています。