世界をメチャクチャにした、アメリカ政治「影の人物」の本性
豪華俳優陣の怪演がヤバすぎる!
「悪徳」とされながらも、なぜかある種の“魅力”を感じてしまうのですが、それは監督が徹底的なリサーチを経て、彼のあらゆる面を引き出しているからであり、それを体現している主演のクリスチャン・ベールがいてこそ。
今回は、約20キロの増量に加え、頭を剃ったりと外見はもちろん、話し方やチェイニーの精神世界など、内面も含めてすべてを習得しており、まさに全身全霊で挑んでいます。
あえて言葉にする必要もないくらい、見事な怪演は一目瞭然ですが、脇を固めるスティーヴ・カレルやサム・ロックウェル、エイミー・アダムスといった実力派俳優たちのなりきりぶりも必見です。
なんとチェイニー本人には無許可で製作
コメディ出身のアダム・マッケイ監督だけに、堅苦しくなりがちな政治映画もテンポよく描いており、ブラックユーモア満載の本作。驚くことに、現在78歳で健在のチェイニーに対し、本人の許可を取らずに製作されているのですが、それゆえに忖度は一切なしの痛快さも味わえます。
アメリカの政治やシステムなどがイマイチわからないという人にでも、十分に楽しめるエンターテインメント作品です。
もし、本作をより理解したいのなら、現在公開中の映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』と合わせて鑑賞するのがオススメ。『バイス』は政治の裏側をあぶり出していますが、もう一方は表側からの目線で同じ出来事を描いており、こちらも違う意味で興味深い作品となっています。
この機会に、これまで見えてこなかった知られざるアメリカの闇にどっぷりと浸かってみては? 令和の時代には、こんな歴史が繰り返されないことを願うばかりです。
<TEXT/志村昌美>
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