英国No.1クラフトビール「BREWDOG」。炎上すれすれの奇抜なマーケティングとは
造り手が製法や、飲み心地、味わい香りなどを追求し、大手メーカーの出すビールとは異なる魅力を持つ「クラフトビール」。ブリュワリー(醸造所)ごとにさまざまな個性があり、日本でも多種多様なクラフトビールが販売されている。こうしたなか、 英国発のクラフトビールとして知られるのが「BREWDOG(ブリュードッグ)」だ。同ブランドのフラッグシップ商品「PUNK IPA」の青い缶のデザインはインパクトがあり、最近では成城石井や酒のやまやといったリアル店舗でもよく見かけるようになった。
BREWDOGは英国No.1のクラフトビールとして知られ、近年では日本市場にも力を入れているという。
ブリュードッグ・カンパニー・ジャパン株式会社 マーケティングマネージャーの名嘉眞(なかま)隼人氏に、BREWDOGが英国で人気になった理由や日本におけるマーケティング戦略について話を伺った。
炎上すれすれの奇抜なマーケティングでブランド認知が急拡大
2007年、英国・スコットランドにてBREWDOGは生まれた。
創業者のJames Watt(ジェームズ・ワット)、Martin Dickie(マーティン・ディッキー)、そして愛犬のBracken(ブラッケン)。
若き青年2名と愛犬1匹という風変わりな創業メンバーのもと、BREWDOGは産声を上げたのだ。しかし、名もない新興のクラフトビールが、なぜほんの数年で英国中に知れ渡るようになったのか。
「BREWDOGを立ち上げた創業者2名のバランスが絶妙だった」
そう話す名嘉眞氏は、BREWDOGが急成長を遂げた背景について説明する。
「ジェームズはビジネスマンで、マーケティングとファイナンスに長けていました。一方、マーティンは醸造家で、ビール造りへのこだわりや探究心は秀逸なものでした。この2人が持ち合わせているスキルを生かし、両輪でビジネスを回していったことで、BREWDOGが英国のクラフトビール市場の開拓に成功したんです」
戦車に乗って、ロンドン中心部のハイストリートを駆け抜けたり、ヘリコプターの上からBREWDOGのビラをばら撒いたり。
挙げ句の果てには、国会議事堂の壁にプロジェクターで創業者2人の裸の写真を投影したりと、炎上覚悟の狂気でパンクなマーケティングを数多く実施してきたのだ。
また、創業間もないBREWDOGの名を世に知らしめたのは、常識外れのパンク(PUNK)なマーケティングを行ったのも大きい。
「当時はInstagramやTwitter、YouTubeなどのSNSが出始めた頃で、BREWDOGもいち早くネットの口コミに目をつけました。斬新で奇抜なマーケティングは、それこそ挙げればきりがないほどやっていたと思います。ただ単に話題を作ればいいのではなく、ジェームズは『炎上するかしないかの瀬戸際』をうまくコントロールし、ポジティブな意見が集まるような施策を考える力がずば抜けていたんです。
派手さが目立つマーケティングの中にも戦略やロジックを立てて、ブランドバリューを高めていく。こうしたジェームズの計算された取り組みが、BREWDOGの認知度向上に大きく貢献したわけです」