「創業218年のミツカン」の原点とDX化の本気度は?外資系出身CDOに聞いた
日々の料理を作る際、食材の旨みを引き出し、美味しく仕上げてくれるのが調味料だ。数ある調味料のなかで、食酢やぽん酢のリーディングカンパニーとして知られているのがミツカングループである。
創業は1804年にまで遡り、実に218年もの歴史を積み重ねてきた老舗企業だ。そんなミツカングループだが、近年のデジタル化の波に合わせ、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも果敢に取り組んでいる。
伝統的な企業慣習で守るべきものと、先進的なテクノロジーで実現させるものを、どうバランスを取りながらDXの推進を行なっているのだろうか。株式会社Mizkan Holdings 執行役員CDOの渡邉 英右氏に話を聞いた。
マクドナルド時代に学んだマーケティング術
渡邉氏は大学時代、米国のシアトルにあるコミュニティカレッジ(アメリカの2年制大学)に通っていた。そこで、マイクロソフトを始めとしたIT産業が盛り上がりを見せ始めていたシアトルという環境下で影響を受け、ITの将来性を感じるようになったという。
「大学卒業後はITに携わる仕事がしたいと、日本マイクロソフトへ入社したんです。その後は小売店のPOSデータを活用したマーケティングを支援する会社(カタリナマーケティング社)や、データ分析のソリューションを提供するクラウドベンダー(テラデータ社)など、ずっとデジタル畑のキャリアを築いてきました。
そして、2016年に日本マクドナルドのデジタルマーケティング責任者として入社し、当時CMO(最高マーケティング責任者)だった足立光さんの下で、デジタル施策に従事しました」
いくら企業が発信しても信頼されない
渡邉氏がマクドナルドへ入社した頃は、使用期限切れの鶏肉使用や異物混入の問題で顧客の信頼を大きく失って、経営危機に晒されていた時期であった。そんななか、会社として理解していたのは「いくら企業がポジティブな発信をしても信頼してもらえない」だった。
「信頼を回復させるには、お客様やメディアに取り上げてもらえるような仕掛けを企画し、たくさんのネタを提供することで面白い体験をしてもらうのが重要だと思っていました。そこで『コミュニケーションの型』を意識し、生活者に参加してもらう施策を行っていったのです。
『マクドナルド総選挙』や『東西バーガー対決』、『#あなたはどっち派』といった生活者参加型のキャンペーンを行い、それをSNSを活用してコミュニケーションし、話題化していくことで、少しずつ好感度を取り戻していきました。この取り組みは、ミツカングループに入った今でも参考にしています」