ワクチンパスポート導入に、なぜ賛否?米国では“接種拒否だとクビ”も現実に
海外を旅行する際に必要なものは、世界で通用する身分証明書の「パスポート(旅券)」だ。外務省のサイトによると「生命の次に大切なものはパスポート」とされている。
近年、日本のパスポートは、「世界で最も価値が高く最強のパスポート」となっている。理由は、英国の市民権取得支援などを行なうコンサルティング会社「ヘンリー&パートナーズ(Henley&Partners)」による、ビザ(査証)なしで渡航できる国や地域の数でパスポートを比較したランキングの「ヘンリーパスポート指数」で首位(シンガポールも同位。ビザなしで192か国に渡航可能)を獲得し続けているからだ。
そもそも「ワクチンパスポート」とは?
しかし、新型コロナ禍の今、世界を自由に行き来できる最強のパスポートは、「ワクチンパスポート(vaccine passport)」だろう。「ヘンリー&パートナーズ」の報告書によると、コロナ禍では「ランキング上位のパスポートであっても、理論上と現実の渡航可能性で大きな差がある」という。
そもそも「ワクチンパスポート」とは、新型コロナワクチンを接種済みの証明書のことで、日本語では「新型コロナワクチン接種証明書」と呼ばれている。具体的には、ID(身分証明書)の写真とワクチン接種した際に受け取るワクチン接種記録カードをスキャンした画像をスマートフォンのアプリ内に取り込み、そのスマートフォンの画面(または書面)によって、ワクチン接種済みであると証明することだ。
接種記録の内容は、氏名、生年月日、ワクチンの種類、接種日、接種場所となっている。米国疾病予防管理センター(CDC)発行のカードやワクチン接種記録の写真やそのコピーなどもワクチンパスポートに含まれる。
米国政府は、今年11月8日より日本を含む国外からの渡航者に対して、新型コロナウイルスのワクチン接種完了を入国条件とすると発表(その上、渡航前3日以内のウイルス検査での陰性を提示する必要がある)。そのため、今後はワクチンパスポート保持者のみが米国へ入国できることになる(予防接種を受ける資格のない子供など、いくつかの適用除外はある)。
ジムや映画館で提示を求められることも
米国のワクチンパスポートは、海外を旅行する人だけが保持するものではなく、スポーツ観戦場やコンサート会場、屋内のレストランやスポーツジムや映画館、職場など、大勢の人たちが集まる場所に入る際に提示を求められる証明書となりつつある。ニューヨーク州では、ワクチンパスポートを全米発で今年3月から導入している(同州では「エクセルシオール・パス」という名称)。ハワイ州でも今年5月から同様だ。
日本では厚生労働省が今年7月26日、海外渡航時に新型コロナウイルスワクチンを接種したことを証明できるワクチンパスポートの発行を開始。ワクチンパスポートにはワクチンのメーカー、製造番号、接種時期、接種を受けた人の氏名や生年月日などを日本語と英語で記載してある。