ワタミで「ワクチン接種2回でビール無料」キャンペーン。壊滅的な売上の打開策となるか
飲食業界はコロナ禍で苦戦を強いられており、なかでも居酒屋は緊急事態宣言による時短営業・休業が影響し、大打撃を受けています。個人経営の店舗は相次ぎ閉店に追い込まれていますが、いまだ体力のあるチェーン店はコロナ収束後を見据え、様々なキャンペーンを実施するようです。
居酒屋チェーンを展開する株式会社ワタミも2021年6月1日~11月30日、ワクチンを2回接種した人が生ビール1杯無料になるキャンペーンをグループ全店で始めました。同社外食事業の売上高は大きく減少していますが、はたして復活できるのでしょうか。決算資料を参考に予想してみます。
案の定、飲食業界は厳しい状態
日本フードサービス協会によると2020年は飲食業界全体の売上高が前年から約15%減少しました。固定費が大きく薄利多売ともいえる業界でこの減少率は存続にも影響する水準です。
そのなかでも居酒屋関連は壊滅的で約48%減を記録。最新データの2021年4月では、コロナ前の2019年4月と比較して、約73%も減っており第3波の影響が強く表れています。
決算資料によるとワタミは2020年期は全体の売上高が約33%も減少し、最終赤字額は前年度の3.9倍まで膨らんでしまいました。長期借入金によって現在は手元の現金を確保していますが、いずれは返済しなければなりません。
ワタミの近年の業績は?
ワタミの主な事業は居酒屋チェーンを中心とした国内外食事業であり、2020年3期末時点で491店舗を展開しています。近年、居酒屋「和民」を見かけなくなりましたが、これは新業態店へと転換しているためです。
2020年3期末時点での主力店舗は各150~200店舗を有する「ミライザカ」と「鳥メロ」です。そして「ワタミの宅食」で知られる宅食事業は意外にもかなりのウェイトを占めます。その他に海外外食事業など計5事業を展開しています。コロナの影響が少ない2020年3期の業績はそれぞれ以下の通りです。
国内外食事業:469.6億円
宅食事業:344.6億円
海外外食事業:67.3億円
その他:27.8億円
近年の業績は芳しくないようです。決算資料によると2017年から2020年までの売上高は、2017年:1003億円965億円(-3.8%)⇒2018年:947億円(-1.8%)⇒2019年:909億円(-3.8%)と徐々に減少し続けています。
営業利益は2017年:1.8億円⇒2018年:6.6億円⇒2019年:10.6億円⇒2020年:0.9億円と何とか利益を出していますが、売上高と比較するとかなり低い水準。最終利益も2017年:7.2億円⇒2018年:16.4億円⇒2019年:12.3億円⇒2020年:3.5億円となっています。
以前ほどの勢いを失った「和民」からの脱却を目的として「ミライザカ」などの新店舗を展開していますが、ライバル店と比較して知名度は低く、思うように消費者の心を掴めていないと思われます。高齢者向けを中心とした宅食事業も2014年までは成長したようですが、近年では横ばいが続いており成長にブレーキが掛かっています。