流行りの詐欺「アポ電強盗」から、コロナ調査を装う強盗まで
犯罪の手口は時代の流れとともに変化します。2000年代から息子になりすまして電話をかけてATMからお金を振り込ませる手口が多発して「振り込め詐欺」と呼ばれましたが、その後「未公開の株があって近々上場する」と嘘をついてお金を騙し取る金融商品詐欺など、詐欺のバリエーションが増えたことから「特殊詐欺」という名称になりました。
前回の記事で紹介したように詐欺被害がなかなか減らない原因に、警察などの警戒や摘発に対して、組織的犯罪グループが新たな手口で応戦してくることにありますが、これまでに特殊詐欺のグループは、大きなパラダイムチェンジを2回してきました。
巧妙な手口により深刻な被害額が
1つ目は、ATMからお金を振り込むという、非対面な方法で、お金を取っていた形から、家や公園などで直接にお金を受け取る、対面型へのパラダイムチェンジ。そして2つ目は、現金を騙しとるのではなく、お金のもととなるキャッシュカードを詐取するというものです。
それにより2019年度の被害総額(警察庁/特殊詐欺認知・検挙状況等より)も約315億8000万円と被害は深刻で、1日あたりの被害額は8600万円を超えています。
とはいえ、警察の取り締まりにより、年々特殊詐欺の被害は減ってきているのも事実です。そこでお金やキャッシュカードを取りづらくなってきた犯罪グループは2019年より、第3のパラダイムチェンジを行い始めています。それが「アポ強盗」です。
アポ電の手口もマニュアル化している
アポイント電話(アポ電)とは、詐欺を行う前にかける電話のこと。これまでは息子や警察などになりすまして電話をかけ、資産や家族の状況を把握した上で犯行を行っていたのですが、最近では「強盗」という手段を使いはじめています。
アポ電強盗自体は2018年頃から散見されていました。特にこれが世間の耳目を集めたのは2019年1月の東京都渋谷区初台の事件からです。
この時は、事前に高齢者宅にアポ電をかけて、家に多額の現金があることを把握。そのうえで警察官を装った男3人が押し入り、約2000万円を奪いました。翌月にも同区にて別の高齢夫婦の家から400万円ほどが強奪されています。
特殊詐欺の手口がマニュアル化されているように、アポ電強盗でも「電話をかけて家に現金があることを把握したところで、3人組で押し入る。そして家人の手足を縛り、金庫の番号を無理やり聞き取り、お金を奪う」という、どれも判を押したような手口になっています。
こうしたところから、この強盗は特殊詐欺から派生してきたものとみて間違いありません。強盗に押し入り、縛ったことにより、高齢の女性が死亡するという痛ましい事件も起きています。