三菱商事出身の新社長が斬り込んだ「カンロ 60年目のタブー」
近年、健康志向の高まりから「糖質制限」がブームとなって久しい。糖質制限ダイエットによって、糖質を抑えるよう心がけている人もいるだろう。糖質制限することが、健康増進につながる。このような社会的風潮があるなか、あえて「糖と歩む企業」と位置づけて事業展開しているのがカンロだ。
1912年の創業以来、1世紀に渡ってキャンディの製造を行ってきた同社は、2017年に新CI(コーポレートアイデンティティ)を導入。糖質制限ブームの最中、なぜ「糖」をポジティブに捉え、経営を行うのか。
カンロ株式会社の三須和泰社長に、糖質制限の逆風に立ち向かう理由や今後の事業展望について話を聞いた。
菓子業界にコミットしていた三菱商事
三須社長は三菱商事にて37年間働いたのち、2016年にカンロの代表取締役に就任する。
「上場企業のトップは初めて」と語る三須社長だが、三菱商事時代に得た菓子業界の知見や見識の広さを買われ、カンロの社長に就任が決まったという。
「三菱商事は商社の中でも菓子業界にコミットしていて、複数社のお菓子メーカーの総代理店を務めています。そのため、私も菓子を含めた食品に関わってきました。ロンドン、北京など海外での駐在を経験したり、海外市場本部長としてインドネシア、タイ、ミャンマー、イギリスの食品事業の開発に携わったりと、長年に渡って菓子業界を見てきた。
そして、食品メーカーや総合食品卸の社外取締役として経営に携わった経験もあったため、カンロの社長に就任した時もそれほど戸惑うことはありませんでした」
古い企業体質を変える「社員との対話」
とはいえ、上場企業のトップとして、社長業を常勤で行うことによる不安や苦労した点はなかったのだろうか。
「不安はそんなになかったのですが、就任当時のオフィスは現在本社がある新宿の東京オペラシティビルではなく、中野の自社ビルでした。所々に歴史が長い企業ゆえのレガシーが色濃く残っていた。この古い体質をどう変えていこうか、頭を悩ませましたね。特に社員の意識改革をするには苦労しました」
三菱商事はカンロの筆頭株主という間柄であることから、2014年から2年間は三菱商事出身の戸名厚氏が社長を務めていた。
「いきなり社長が変わって『あれやれ、これやれ』と言ったところで、前に進まないのは理解していました。そこで、社員7、8人のグループを作って『飲みニケーション』を積極的に行った。特に若い人とはだいぶ飲んで交流しましたね。
また『カンロ未来像プロジェクト』を立ち上げ、若い世代の社員にカンロの未来を描いてもらう機会も作りました。少しずつ社員との関係性を築いていき、カンロをより良い企業にしていこうというマインドの醸成を図りました」