河井夫婦逮捕、給付金スキャンダル…それでも若者は「安倍支持」なのか?<ダースレイダー>
東京大学中退という異色な経歴を持ちながら、明晰な頭脳を生かしマルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(43)。この連載では現代日本で起きている政治や社会の問題に斬り込む。
河井克行前法相・案里議員夫妻の逮捕、検察庁法改正案をめぐる検察人事への介入疑惑、さらに持続化給付金事業の再委託による中抜き疑惑と、コロナ禍でも次々と問題が浮上している安倍政権。
一連の政府対応や報道を、この国の若者はどう見るべきか? 前回に引き続き、ダースレイダーがわかりやすく解説する。
多くの若者が“現状維持”を求めるわけ
ダースレイダー:今の若者のなかには、物心ついたころから安倍政権だったという人もいるわけですよね。あるいは、小さいころは民主党政権の末期。「政治家というのはダメだなぁ」ってイメージをもったタイミングで安倍政権に変わっている。今の安倍政権に問題があるのはわかったけど、そうじゃないものに変わることによって何がおこるかわからない。それは怖いから、今の状態を維持してほしい。こういう考えになっている人が多いと思います。
気づいたら、この何とかやってればいいという“今”がずるずると下がっていって、世界中を巻き込むコロナのパンデミックで、現状維持どころか、昨年の今頃と比べて国全体が叩き込まれてしまっている。
自粛要請によって、かつて通っていた店が次々となくなっていく。これって“今”がかなり変質してしまって、この先コロナがいったん落ち着いたときにその店が戻ってくるかと言われたら、そんなことはない。70~80年やってきた喫茶店や洋食屋が戻ってくることはないんです。それでも「現状のままがいい」「他の政権が怖い」というメンタルになっているのであれば、自分の現在地を確認をする必要がある。
そして今回、図らずも家にいる間に「法律というのはどうやってできていたんだっけ」「そもそも政治家の役割は何だったんだっけ」ということを確認する機会が増えたと思います。
コロナ対策の不手際で気づく問題
ダースレイダー:その結果、「みんなを助けますよ」と言って用意されたのが定額給付金。1人10万円が世帯ごとに振り込まれると。これ、ネグレクトや家庭内暴力があり関係が良くなかったり、別居している家族の場合はどうなるのか。こういった問題が出てくるのに、なぜ世帯ごとに振り込むという決定をしたのか、とかね。
しかも入金にめちゃくちゃ時間がかかっていて、郵送よりオンラインで申請したほうが遅いということも起こっている。日本のオンライン事情はどうなっているの? ネットのほうが処理が遅くなるって、どんなシステムを使っているの? こういったことが気になってきます。
なんでこうなったか考えてみましょう。安倍政権が任命した情報通信技術(IT)政策担当大臣・竹本直一さんは、ハンコ議連といって日本のハンコ文化を大事にしよう、広げようとしている人です。テレワークなのにハンコのためだけに出社するという、お笑いみたいなしょうもない話が現実に存在している。ハンコを推奨する人がIT担当大臣に選ばれるって、本当に国民のためになる判断だったのか。
また、給付金を全国に配るシステムを統括する総務省では、高市早苗さんという方が大臣をやっているんですが、本当に彼女が適任なのか。日本に優れた人材はかなりいると思うんですけど、本当にふさわしい人が担当をやっているのかという人事のおかしさに気付いたと思います。