自分の未来をコントロールするには?文豪・森鷗外に学ぶ「カオス理論」
文学なんて時間の無駄、文学なんて読んでも儲からない、そんな時間があるならビジネス書を読む……。そんな感覚を持つビジネスパーソンは多いかもしれない。しかしそのような考えは、経営戦略の基本から考えても大きな間違いである。
多くの「デキる」ビジネスパーソンは経済紙、ビジネス雑誌、ビジネス書、ときに経営学書・経済学書・技術書などを読む。ライバルに後れをとらないためにもそうした読書は必要である。
しかし、他のビジネスパーソンと「差」をつけるには、他者と同じ情報を得ていてはダメである。経営戦略論の大家ポーターも指摘するように「Strategy is being different」だ。ビジネスパーソンがあまり読んでいないからこそ、いま文学を読むことは他者と違った価値(=差別化)につながる。
ただしそこには「読み方」がある。そこでこの「文学で“読む”経済」では、文学から社会と経済を読みとり、ビジネスに活かすという体験を、読者と共有することを目指す。
物語の舞台は東大医学部
森鴎外の『雁(がん)』は1880年を舞台にした話として語られる。本が出版されたのは1915年、雑誌に連載されていたのは1911年なので、いずれも今から計算すると100年以上も昔である。
しかしそこで描かれていることは、実はカオス現象・カオス理論の先駆けであり、現在でも示唆がある……というと驚かれるかもしれない(なおご存知の方も多いと思われるが、雁というのは鳥の種類である)。
『雁』の舞台は東京大学。官立東京大学はこの物語の6年後に帝国大学となり、さらに東京帝国大学、戦後に東京大学へと再度改称された。その中でも医科大学(今でいう医学部)の学生たちと、学生寄宿舎の小使から高利貸しとなった末造、その末造の愛人であるお玉が主な登場人物である。
『雁』の物語自体はシンプルで今でも読みやすい。そのためこの記事で興味を持たれた方には是非手に取っていただきたいと思う。