日本は服の自給率が低い。「国産アパレルブランド」が持つ危機感
靴下は5足セットを買って、穴が空いたら捨てて、買い換える……。というように、消耗品として身につけている人は多いでしょう。でも、穴が空きづらく、空いてもずっと交換してくれる靴下があったら?
「交換可能ソックス」が誕生したいきさつについて話を聞いた前回のインタビュー。今回も引き続きファクトリエの代表・山田敏夫さんにファストファッションが台頭する中で、改めて「日本発の一流ブランド」作りに取り組む、仕事の極意を聞きました。
技術力を持った工場とお客をつなぐ
――日本製にこだわったファッションブランド・ファクトリエですが、他の国内ブランドとの明確な違いは一体どこにあるのでしょう。
山田敏夫(以下山田):ファクトリエは高い技術力を持つ国内工場とお客さんとを直接繋ぐところです。僕が実際に足を運び、世界に通用する技術・こだわりをもっていると感じた工場のみと提携して、オリジナル商品を生産しています。
現在は全国55の工場と一緒に仕事をしていますが、どこも革製品やニット、シャツ、ネクタイなど、ひとつの製品に特化したモノづくりを続けてきた工場ばかりです。
――なぜ、国内工場にこだわるのでしょうか。
山田:世界的な一流ブランドはモノづくりの精神に基づいているからです。その考えに至る背景には僕の出自が関係するので、少し話しますね。
モノは良い。問題はどう伝えるか
山田:僕は熊本市内の老舗婦人服店の息子として生まれ、子供の頃からメイドインジャパンの服に囲まれて育ちました。
大学生の時にはフランスに留学してグッチのパリ旗艦店で働いたのですが、そのときに同僚から「日本には本物のブランドがない」と言われたのです。それは言葉通り「本当にメイドインジャパンのブランドがない」という意味でした。
実際、エルメスを筆頭にヨーロッパのメゾンブランドは工房から始まっています。日本には織や染めの伝統があり、その技術の高さは世界的にも認められているのに、モノづくりに立脚したブランドを確立していなかったのです。
そこで、日本のモノづくりから世界一流ブランドを作ることを決意し、技術力を持った工場探しから始めました。