<最終回>貨幣は死に、そしてよみがえる!――『貨幣論』と『トイ・ストーリー』を混ぜてみた
(この物語は岩井克人『貨幣論』がもし『トイ・ストーリー』だったら? という仮定のもとに書き進められています)
【最終話】貨幣は死に、そしてよみがえる!
<登場人物>
リンネル:服の素材に使われる亜麻布のことで、英語で言うとリネン。
お茶:10ポンドのお茶。
上着:新品の1着の上着。
コーヒー:淹れたてのコーヒー。
紙幣:金貨に代わるあたらしいもの。偉い。
ケインズ:イギリスの経済学者。経済の安定には政府の積極的な介入が必要だとした。主著に『雇用・利子および貨幣の一般理論』
異邦人:貨幣共同体を壊すかもしれない人
未来人:現代人に対して紙幣を気前よく贈る人。
キャベツ人形:商品の差異化競争の果てに現れる究極の商品。
<前回までのあらすじ>
増え続ける紙幣を何とかするため、「異邦人」を連れてきたリンネル。一方、ケインズは穴を掘って埋めようとしていた。リンネルが連れてきた異邦人が「ある言葉」をつぶやいたとき、紙幣は──!?
異邦人の襲来! 貨幣は未来人からのプレゼントだった!?
紙幣「やめろ……」
異邦人「今日、貨幣が死んだ……」
紙幣「やめろぉぉぉ────────!」
異邦人がつぶやいた瞬間、貨幣は発光し、そのまぶしさでリンネルたちが目をつむってまた目を開けたときには、大量にあった紙幣は消えてなくなっていました。
上着「いったいなにが……?」
さっきまで穴を掘っていた商品たちは呆然と立ち尽くしています。
ケインズ「そうか、循環の連鎖を断ったのか……」
上着「どういうこと?」
ケインズ「貨幣は、それを『貨幣である』と認識する同じ共同体の人間にしか使えない。それを貨幣だと思わない異邦人がやってくると、貨幣として使えなくなるんだ」
異邦人「ぼくは貨幣の循環を却下したばかりだった。それで、血液の波が体の中を規則正しく流れるのを感じることができていた……」
ケインズ「私が彼に貨幣を渡しても、彼はそれを貨幣だと思わないから、使えないってことだ」
上着「なるほどね。でも、貨幣がまったく機能しなくなっても、困るんじゃないかな?」
ケインズ「ああ、そうだ……」
ギュン!
ケインズ「!?」
話しているケインズと上着のあいだを、突然、猛スピードの自動車が突っ込んできました。走った跡には火が吹いています。車のドアがカモメの翼のように開くと、出てきたのはお茶でした。
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