<第11回>異邦人の登場は貨幣世界をどう変えるか。そして、次号ついに最終回…!?――『貨幣論』と『トイ・ストーリー』を混ぜてみた
ケインズ「スコップを垂直に突き立てたあとに、テコの原理で土を持ち上げるんだ。そうすれば楽に掘れるぞ」
商品たちは猛然と穴を掘り、お金を入れ、穴を埋めていきます。しかし、いくらやっても間に合わないのです……。
紙幣「くだらんことをやっている」
彼らの姿を見て、紙幣は吐き捨てるように言いました。
ケインズ「!?」
ケインズは紙幣の姿を見つけて飛びかかりました。そして、掴み合いながらごろごろと地面を転がり、マウントを取り合いました。
ケインズ「よくも貴様!」
紙幣「お前が何をしようと無駄だ!」
ケインズ「意味はある……! 穴を掘って埋めるだけでも……!」
紙幣「クソが!」
紙幣がケインズの腹を蹴り上げると、ケインズは吹き飛ばされ、咳き込みながらうずくまりました。
共同体の外からやってきた『異邦人』
苦しんでいるケインズのもとに、あの布っきれがやってきました。
リンネル「おまたせ!」
ケインズ「リンネル! その隣にいるのは……?」
リンネル「『異邦人』だよ」
異邦人「ここはいったいどこだ……」
リンネルは商品世界に異邦人を連れてきたのでした。
異邦人「アルジェの海岸を歩いていたはずが、今は紙きれの海岸を歩いている……」
リンネル「ここは『商品世界』だ。だけど、そんなことはどうでもいい」
異邦人「どうでもいい……?」
リンネル「きみのような『異邦人』がこの世界には必要なんだよ」
異邦人「……」
異邦人はまだ事態が飲み込めていません。
ケインズ「そうか、そういうことか……」
ケインズは一瞬で理解したようでした。
紙幣「なんだ、何をするつもりだ、お前ら……」
リンネルの不穏なたくらみに、紙幣はだんだんと感づいたようでした。
リンネル「貨幣経済っていうのは、受け取る相手が『これは貨幣である』と認識しないと成り立たないんだ。じゃあ、貨幣の共同体の外から『異邦人』がやってきたら、どうなる?」
紙幣「!!」
リンネル「すべてが壊れる可能性があるんだよ」
紙幣「バカな……!」
リンネル「信じられないかい? 実行してみたらわかる」
紙幣「やめろ……」
リンネル「じゃあ、異邦人、あの言葉を言ってくれ」
リンネルは異邦人の目を見つめて語りかけました。
異邦人「今日、貨幣が死んだ……」
(最終回へつづく)