株価は3分の1に…「にじさんじ」VTuber事務所の株高が失速した理由
海外事業は好調に見えるが…
海外では主に中国、韓国、インドネシアで展開しています。特に中国でのVTuber人気が根強く、動画配信サービス「BiliBili」では、ANYCOLOR所属以外も含め、数多のキャラクター動画がひしめいています。
ただし、海外事業においても売上の大部分を占めるのはコマースであり、人気キャラクターを確立してデジタルコンテンツの購入につなげるというビジネスモデルは同じです。海外事業も国内と同じく、2Qの売上高が1Qを下回りました。コマースの減少によるものです。
海外事業の成長期待は高いとはいえ、早くも伸び悩みが鮮明になっていると評価されているのでしょう。株価が下落した要因としても、国内・海外ともにコマースの成長性が失われることへの懸念があると考えられます。
海外投資家への売出し価格を下回る
ANYCOLORは2023年1月18日に海外売出しを発表しました。ベンチャーキャピタルが保有していた株式を海外の投資家に売り出すものです。売出価格は1株5643円。株価の算定基準は2023年1月24日となっており、その日の終値より5.0%安い金額に設定されています。
しかし、売出し後も株価の下落は止まらず、4000円台に突入しました。売出価格の総額は184億4200万円でしたが、仮に株価が現在の水準である4700円だったとすると、153億円程度だった計算です。30億円もの差が生じています。早くから投資していた株主が早くも逃げ出しているように見えます。
ただし、株価は過熱しすぎていた印象がありました。現在の株価の水準でも公募価格を3倍上回っています。スタートアップは公募価格を下回って推移するものも少なくありません。ANYCOLORのさらなる成長に期待する投資家が多いのも確かです。
<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ>