賃金未払い、不安定な雇用…スクールカウンセラーが告白「劣悪すぎる労働条件」
子どもの育ちに関する問題は深刻化
加藤さんは、教員とは対立する意見を持った場合にはきちんとそれを伝えることがスクールカウンセラーの仕事であるというが、「とても気を遣う」とも話す。スクールカウンセラーによる専門的視点からの見立てや助言を積極的に取り入れて連携して子どもを支援しようとする教員もいれば、そのような連携が難しい教員もいるためだ。
冒頭の心理職ユニオンのアンケートでは、回答者702人のうち307人が職場のストレス要因として「教職員・管理職との関係」を挙げていた。なお「保護者との関係」「児童生徒との関係」をストレス要因として選択する人はそれぞれ56人、17人であり、それほど多くない。
教職員・管理職との関係が大きなストレスとなっていることがわかる。教員の多忙化が進む一方で、子どもの育ちに関する問題は深刻化しており、教員の側にも丁寧な対応をする余裕がますます失われている。加藤さん自身も「先生たちはとても忙しくしている」と話している。
しかしそのような中でも、加藤さんは「ひとりひとりの子どもを大切にして向き合っている先生方もたくさんいらして、私自身も学ばせてもらっている」と言う。
専門性の発揮を妨げる劣悪な労働条件
このように教員と協力しながら、時に教員と意見を闘わせながら子どもの育ちを支えるスクールカウンセラーだが、その労働条件は劣悪だ。再び心理職ユニオンが実施したアンケート調査の結果を見てみよう。
まず、職場のストレス要因を複数回答で聞いたところ、最も多かった回答が「時間外の無償労働」で57%であった。都の公立学校で働くスクールカウンセラーは、通常1校につき1週間に1回・1日7時間45分働いており、加藤さんも同様だが、残業や休憩時間中の労働が常態化しているという。
「働いている保護者の方も多いので、保護者の方との面談は遅い時間になりがちです。また先生たちへの面談内容の報告や業務記録の記入をその後にやらなければいけないので、残業はほぼ毎回の勤務で発生しています。学校が開いている時間内に仕事が終わらずに、家に仕事を持ち帰ることも少なくありません。就業時間中の休憩もほとんどとれません」