他の営業マンからも「あいつにはかなわない」と一目を置かれていた新藤さんでしたが、一日中会社でコツコツと無言で行う事務処理を強いられるのが苦痛で、とうとう「辞めてやる！」と辞表を提出。

　営業マンとしての道を閉ざされたため、すっかりやる気を削がれてしまった結果でした。

「新藤さんは入社早々、課長から『他人と違うことをするな！』と押し付けられていたそうです。本来なら新入社員の個性を伸ばして、得意分野で活躍させることで、本人もやる気になり、会社も潤っていくわけです。だから生意気な新人を優秀な人材に育てられなかった課長の責任は大きいといえるでしょう」

「部下は上司を選べない」ならどうする？

　新藤さんはその後、フリーでイベントを運営しました。今年30歳の誕生日を迎えると、広告事業の会社を立ち上げ、数々のイベントプロデュース業に精力的に取り組んでいるそうです。

「『路上駐車をするということ自体、社会人としてなっていなかった』と新藤さんは当時を振り返りながら猛反省しています。社会人としていい勉強になった、学ぶことも多かったという発言に、彼の成長を感じますね」

　社長に就任してから、今度は新人を指導する立場になった新藤さんに、矢加部さんは次のようにアドバイスを送ります。

「自分がやんちゃだったことですし、頭ごなしに指導するのではなく、コミュニケーションを密にして、教えることが大事です。新人が生意気な態度をとったら、かつてハイラックスサーフを路上駐車したことを思い出せと言っていますよ」

　部下は上司を選べない。だからこそ自分自身を育ててくれる優秀な上司に巡り合えたいものです。

― 特集・Around30解雇のリアル Vol.4 ―

＜取材・文／夏目かをる　イラスト／真船佳奈＞