インボイス制度が声優業界にもたらす衝撃、「廃業するかも」声優らの嘆き
裕福な人しか声優はできない?
ちなみにインボイス制度が施⾏され、経済的に声優を続けられなくなる⼈が増加した場合、裕福な家庭で育った⼈のみが続けるられるという状況も想定される。いわゆる“親ガチャ”の影響力が強まりそうだが、福宮氏は「これまでもその傾向はありましたが、それがさらに加速するのだと思います」と分析。
「⽣まれた家の貧富の差で得手が発揮される機会がなくなってしまうということは、あってはならないことです。声優に限らず俳優は、ときに社会の問題を映し出す鏡のような作品を演じます。俳優にとって、さまざまな⼈⽣経験というのも財産です。
いろいろなバックグラウンドを持った役者が揃うからこそ、それぞれの個性が光る作品が⽣まれます。貧富の差だけでなく、役者やクリエイターがひとつの属性からしか生まれなくなったとしたら、バリエーションは確実に減ることになるでしょう。そういった作品を見て、人々は感動できるのでしょうか。実力による競争・淘汰が、政策によって歪められることを受け入れることはできません」
当事者に正しく情報が伝わってほしい
とはいえ、インボイス制度は2023年10⽉の施行が決まっている。私たちができることは何なのか。
「まずはこの制度について、この制度の問題点について周知することが必要です。理解不足のまま登録することが1番危険であり、まだ登録しないことも⾮常に⼤切です。声優に限らず、インボイス制度の影響を受ける当事者はたくさんいます。そうした当事者に正しく情報が伝わってほしいです。
そのために、VOICTIONとしても当然周知をするよう努⼒していますが、今1番求められているのはマスメディアの⼒です。⼤きく報道されることで、この問題に関⼼を寄せる⼈を増やし、制度の中⽌を実現したいと思っています」
インボイス制度施行まで1年を切った。複雑な制度であり、一言で説明することは難しい。ただ、多くの業界、多くのフリーランスに影響を及ぼすことを想像してみてほしい。
<取材・文/望月悠木>