阿部寛、自身の20代を振り返っての現在地「若い子たちとしゃべるのは面白い」
ドラマに映画に日本を代表する俳優の阿部寛さん(58歳)が、ディズニープラス「スター」の日本発オリジナルドラマシリーズ『すべて忘れてしまうから』で、配信ドラマに初出演、初主演を務めています。
燃え殻さんの同名エッセイを原案に、阿部さん演じるミステリー作家“M”の、失踪した恋人探しを軸に、何気ない日常の会話で日々を紡いでいく本作。久々のラブストーリーに挑んだ阿部さんに話を聞きました。また50代に入ってから、役者として役が狭まるのを感じているという阿部さんが、そうした年代の「役の幅をどんどん広げたい」と語ってくれました。
普段の言葉で紡ぐ挑戦的なドラマ
――『まだ結婚できない男』(2019)以来のラブストーリーですね。
阿部寛(以下、阿部):ラブストーリーといってもちょっと異色でミステリーの要素のほうが強いんじゃないかな。でもラブストーリーって、やっぱり面白い。内面を濃く探りあって傷ついて。そういうのは真剣にやればやるほど傍から見るとコミカルだったりしますし。
――本作のトーンにはどんなことを感じましたか?
阿部:セリフが、セリフセリフしていない、本当に日常の言葉でドラマのセリフって、やっぱりたいていがセリフ的で、そうした言葉をきっかけに展開が大きく変わっていったりするんだけど、今回の作品にはそれがあまり感じられない。ちょっとした言葉で、人を傷つけるようなセリフじゃないのに、それを聞いて寂しい思いをしたり。
そうした普段の言葉が反映されているストーリーなので、逆に挑戦的なんです。最近僕は「強い男の役」を多くやってきてきた。なのでこういう役は久しぶりですし。すごく新鮮な気持ちで挑戦させていただきました。
監督からの細かな演出が嬉しかった
――岨手由貴子監督(『あのこは貴族』)の演出はいかがでしたか?
阿部:今回、監督に委ねる気持ちでやりました。一度テストをやったときから、「今のはこうだけど、こういうふうにしましょう」と、細かい演出がありました。この歳になると、なかなか細かい演出って受けないんです。だから嬉しかったですね。
――配信作品には、どんな印象を持っていますか?
阿部:いろんな世界が広がるんだろうなと。いつどこでも観られるし、もちろん世界中に観ていただける。日本人の精神性がどうやって受け入れられるかなというのは、興味があります。