憧れの移住生活で孤立…東京にも戻れない27歳男性「時が過ぎるのを待つ」
まともに意見を言えずに会合はお開きに
佐古さんが自分の考えや実現できそうなプランを伝えたところ、ほかの参加者たちも前のめりで聞いており、いい雰囲気だったと言います。けれど、「東京ではアリかもしれないが、こっちでは無理だな」とリーダー的な人が溜め息まじりに言った途端、不穏な雰囲気に。
「そのあとは意見を聞かれることもなく、あっという間にお開きになりました。その日は、それほど気にしてはいなかったのですが、翌日から食事会に出ていた人たちがあからさまに冷たい態度をとるように。挨拶しても聞こえないフリをされたことも何度もあります」
しかも、そのメンバーが地域の中心となってイベントや自営業を盛り上げる活動していたため、佐古さんは一瞬にして孤独になり、もらえそうだった仕事もキャンセルに。やさしく声をかけてくれる住民もいましたが、そんなことでは埋められないものがありました。
もっと慎重に決断すればよかったと後悔
地域の自営業者たちに「何か気に障ることをしたかな?」と、オブラートに包んで尋ねてはみましたが、「そんなことはない」と口をそろえるばかり。けれど態度はあきらかに冷たく、何か言葉を交わせば「東京は…」と言われ、佐古さんは孤立していったのです。
「移住支援金は引っ越しや開業準備に使ってしまったので、約束の期日までは、ここで暮らすしかありません。仕事がなく生活も苦しいですが、なんとか残り1年弱を過ごしたいと思います」
「隣人のことも知らないような都会の暮らしに孤独を感じることもあり、人間関係が密で強い結束力のある田舎に憧れていたのに、まさかこんなことになるとは思いませんでした。移住するときは慎重すぎるぐらいでいいと思うし、お金にはゆとりを持ってください」
佐古さんは、「いまは都会で住んでいたときよりも、孤独を感じてツライ毎日を送っている」と言います。住み慣れたところから移住するときには、佐古さんの言うように慎重すぎるぐらい考えて、何があっても対処できる資金を準備しておく必要があるかもしれません。
―特集・若者の孤独―
<TEXT/夏川夏実 イラスト/葉月しあ(@shia_lifestyle)>