怪しい仮想通貨セミナーで見た、人生が壊れる瞬間。600万円をドブに!?
申し込み用紙には名前、携帯番号、生年月日、メールアドレスと、入会するプランを記入する欄がある。さらに「登録後のキャンセルは一切できない」と明記されている。
「と、とりあえず記入だけ済ませてしまいましょう。詳しい説明は後でしますからとりあえず書いて」とタカシ君が迫ってきた。
必死に詰め寄ってくるタカシ君が怖い
タカシ君は少額ではあるがすでに有料会員となっており、おそらく私たちが入会することで紹介料がもらえるのだろう。「来年には億り人になっている」と話す、タカシ君のSNSにはスポーツカーの写真が並び、「来年はどれを買おうかな!」というコメントが添えられている。
そんな人間がわずかな紹介料のためにこんなに必死に詰め寄ってくるとは……。恐怖でしかない。
「私入会を決めました」と話す主婦は19才の息子にもこのマウントコイン社の会員になってもらうと意気込んでいる。
息子は現在浪人中で予備校に通っているとのことだが、主婦は「正直どの大学に行こうともう関係ない。だってマウントコインの会員になればもう何もしなくてもいいんだもの」とマジな目で語っていた。
騙されてしまう人々の傾向とは?
マウントコイン社が会員を騙し、大金を絞り取っているという証拠はない。仮想通貨で億り人となっている人間も実際におり、市場はこれからも伸びていくかもしれない。マウントコイン社が解説する大金の稼ぎ方も、理論的には筋が通っているといえば通っている。
しかしながら、事実をいっているからといってその人間が人を騙さないとなぜ思えるのか? タカシ君や主婦になぜそんな簡単に入会してしまうのか? と聞けばこう返ってくるだろう。
「仮想通貨は詐欺じゃない! 本当に大金が稼げるのに!」
あなたたちが騙されている(かもしれない)のは仮想通貨そのものではなくF氏やマウントコイン社であるということになぜ目がいかないのか。セミナーが終わり、タカシ君と一緒にマンションを出た。
「ホント仮想通貨はまだまだ終わっていないんで、入会するなら今ですよ。今日来ていたおばあちゃんはさっき600万円プランで入会したみたいですよ!」とタカシ君が興奮気味に話す。
先ほど渡された申込書……。配当金の還元率やらなんやらなど、重要なことは何一つ記載されていなかったのだが。600万円という大金をあっさりF氏に預けるなんて……。
目先の利益にばかりに目がくらみ、周りが見えなくなってしまった人間の判断力ほど怖いものはない。騙す側の人間はいつでも冷静でしたたかだ。悪いのは完全に詐欺師の方であるわけだが、自分を守れるのは自らの判断力、これに尽きるということか。
後日、記者の知人である仮想通貨関連の会社勤務の男性にマウントコイン社のことを尋ねると、あっさりとこう言ってのけた。
「この会社は1年半前から流行っている業界でも有名な詐欺グループですよ」
<取材・文/國友公司>