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愛称公募10位だった「こだま」

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500系新幹線 こだま

 1964年10月に開業した東海道新幹線の愛称は公募によって決まったものだ。開業に先立つ6月に始まった公募は、18日間という短い募集期間にもかかわらず、最終的に応募総数約56万通と、国民の関心の高さを示していた。ちょうど全線の工事が終わり、新幹線開業へ向けての試験走行が始まったばかりで、連日のように最高速度の記録が報道されていたという背景があった。

 780種類もあった応募名称の中から選ばれたのは、東京・名古屋・京都・大阪のみが停車駅で所要時間4時間の最速列車のほうが「ひかり」、各駅に停車して東京~大阪を5時間で走るのが「こだま」だった。「ひかり」の名を投票した総数は1万9845通で第1位、以下「はやぶさ」「いなづま」「はやて」と続き、いずれもスピードを想起させるものだった。肝心の「こだま」は10位だった。

 1位の「ひかり」は当然としても、なぜ10位の「こだま」に決まったのか。それは、「ひかり」が光速を意味するのに対し、「こだま」は音速を意味し、この組み合わせを鮮明にしたかったという意図があったからである。つまり「こだま」は「ひかり」ありきの愛称で、いわば「抱き合わせ」で決まった名称なのである。

なぜほかの候補を押しのけて採用された?

 それまで「ひかり」は九州を走る準急列車に、「こだま」も東海道線を走る特急列車に愛称として用いられていた名で、結局それが、そのまま格上げした形となった。そもそも「ひかり」は、歴史のある名称で、戦前には旧満州(現・中国東北部)で朝鮮鉄道・南満州鉄道を走る列車に使われていたものだった

 このあと1992年に、「ひかり」よりさらにスピードアップされた列車が登場することになったとき、光速よりも速いものはもはやなく、抽象的な言葉から選ぶこととなった。候補に上っていた「希望」を、大和言葉に言い換えて「のぞみ」が誕生したのである。この愛称もまた、戦前に朝鮮半島から大陸を走っていた特急列車のものだったため、半世紀ぶりの復活と話題になった

「のぞみ」「ひかり」「こだま」のいずれも、東海道・山陽新幹線のイメージがすっかり定着しているが、じつはそれぞれに歴史があり、新幹線の名前に決まる過程でも、意外な事実が隠されていたのだ。

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