人間は誰しも生まれながらにして、ヒーローとなれる資質を持っている。自身の強みを発見して、それを伸ばしていくことで、あなたもヒーローになれる。そう説くのは、米海軍アメリカで最も尊敬される、米海軍特殊部隊SEALs司令官にして元海軍大将ウィリアム・H・マクレイヴン氏（WILLIAM H. McRAVEN）。

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　退役後はテキサス大学システムの学長を務め、現在はビジネスや教育分野で講演を行っているマクレイヴン氏。元四つ星階級章大将の経歴だけでなくその人柄でも「ヒーロー（英雄）」と呼ばれる。仕事や家庭、どんな組織においても行動規範（コード）を理解することで、あなた自身の成長につながる「ヒーローコード」とはいったい何なのか。

　勇気、謙虚さ、誠実さ、思いやりなどさまざまな分野でのヒーローコードを紹介しているマクレイヴン氏の著書『THE HERO CODE ヒーローコード』より「謙虚さ」についての章を紹介する（以下、同書より抜粋）。

高名な博士が主催する食事会の出来事

　その日の食事会の会場は、美しいハードウッドの床とフレンチドアがあるこぢんまりとした部屋で、カーペット敷きの広い階段を降りるとロビーがあった。9人掛けの主賓用のテーブルと6つの円卓で部屋は埋め尽くされていた。この食事会の主催者は、有名な運動生理学者ケネス・クーパー博士だった。彼は1968年に出版した最初の著書『エアロビクス』でフィットネス革命を起こした人物だ。

　私は、食事会の後、クーパー財団の会合で、講演するよう依頼されていた。主賓テーブルの私の右隣には、NFLダラス・カウボーイズの殿堂入りクォーターバックであるロジャー・ストーバックとその妻マリアンヌがいた。ロジャーとは2014年に私が海軍を退役した後からの親しい友人だ。ロジャー夫妻の右隣にダラス出身のとても素敵なカップルがもう一組いて、その右隣、ちょうど私の真向かいに、クーパー博士と妻のミリーが座っていた。そして私の左隣には年配の紳士とその妻が座っていた。

年配の紳士と会話することに

ウィリアム・H・マクレイヴン『HERO CODE』（扶桑社）

　クーパー博士が来賓の方々に挨拶を述べた後、食事が運ばれてきた。ダラス出身の夫妻に話しかけるには私の席が少し遠く、ロジャー夫妻はクーパー夫妻と話をしていたので、私はすぐ左側の年配の紳士に話しかけることにした食事が始まる前に、私は同じテーブルの人たちに自己紹介をして回った。左側の紳士の苗字を聞きそびれてしまっていたが、チャーリーと呼ばれていることだけはわかっていた。

「お住まいはダラスですか？」と私から声をかけてみた。
「いえ、いえ」と彼は答えた。「妻のドッティとニューブラウンフェルスに住んでいます」

　ニューブラウンフェルスは、私が育ったテキサス州サンアントニオからそう遠くない、素敵な町だった。

「どういった経緯でニューブラウンフェルスに住むことになったのですか？」
「ええ、数年間空軍にいましたが、退役後はニューブラウンフェルスに住むことにしたんです」
「空軍ですか」彼との共通点を見つけ、私は微笑んだ。「私の父も空軍にいて、戦闘機のパイロットでした。息子も現在空軍にいます」
「そうでしたか。現役時代は楽しかったなぁ」と彼は言った。