高校生の防具のニオイにノックアウト寸前。剣道部顧問が体感した苦行の日々
異臭漂う部室でのミーティング
「本当は顔だけ出してすぐに職員室に戻りたかったんですけど、そういうわけにもいかなくて。技術的な指導はできないので、ジッと立っているだけでしたが、そういうのって時間が経つのが遅く感じるじゃないですか。おまけにニオイのせいか途中で気分が悪くなったことも1度や2度ではありません。
生徒たちはクサさに慣れているのか気にする様子は見られませんでしたが、私にとっては罰ゲームも同然の状況でした」
1番辛かったのは練習後のミーティング。制服に着替え終わった後に行っていましたが場所は部室のため、そこら辺に胴着や防具が放置。ニオイは体育館での練習中よりも強烈だったそうです。
「狭い空間に大勢の生徒が入るもんだから満員電車のようなすし詰め状態です。そのうえ部屋にはクーラーなんてないから滝のような汗が流れてくるし、ニオイだけじゃなくて熱中症になってもおかしくないほどの暑さ。それまではいつも部室でミーティングをしていたようですけど、私が耐えられそうになかったので途中からは冷房が利いた校舎内の実習室を手配し、そこでやるように指示しました」
道着や防具の徹底した手入れを指導
そこで面倒でも道着をこまめに洗うこと、防具の陰干しをきちんと行うように指示。面倒臭がる部員が多かったそうですがニオイ対策にもなると丁寧に説明します。
「調べたところ、剣道の道着や防具ってカビが生えやすく、しかも藍色だから分かりにくいことを知ったからです。どのスポーツも道具の手入れって重要だし、それを怠って異臭を発生させるとあれば尚更じゃないですか。知らないうちに周りの人を不快な気分にさせてしまうこともあるし、若い男子が女子から『臭い!』って思われたらかわいそうじゃないですか。
多少脅しも入れましたが生徒たちも思うところがあったのか、意識を改めるようになりました」
臨時顧問を務めたのは1か月弱の短い期間でしたが、復帰した顧問の先生からは「防具の手入れを積極的に行うようになった」と感謝されたそうです。「教師という立場上、生徒にはそれっぽく話しましたが単にあの臭さが嫌だっただけ。そのことを正直に伝えたら大笑いされましたけどね」と、濱中さん。理由はどうであれ、結果的に生徒のためになったのであればよかったのかもしれませんね。
<TEXT/トシタカマサイラスト/zzz(ズズズ)@zzz_illust>