高校生の防具のニオイにノックアウト寸前。剣道部顧問が体感した苦行の日々
学生時代、運動部に在籍していた人なら分かると思いますが、気温30度オーバーの夏場の練習は体力的にもキツかったはず。特に体育館など屋内だと扉や窓を全開にしても風通しが意外と悪く、室温が屋外並みに上昇することも。しかも、汗や皮脂などが混ざったニオイが充満し、「練習と同じくらい辛かった」と話す人もいるほどです。
なかでも柔道や空手、剣道といった武道系の場合、道着の生地は厚手で、洗っても乾くのに時間がかかります。そのため、洗濯しても生乾きだと雑菌が繁殖し、臭いの元となってしまいます。
“未体験のニオイ”にギブアップ寸前!
「教師になって2年目、入院した顧問の先生の代わりに剣道部の臨時顧問を務めることになったんです。それも季節は夏場だったから大変で……。練習場所の旧体育館は熱がこもりやすいのか、ちょっとした蒸し風呂状態。けど、それ以上に生徒たちの汗とホコリ、防具や道着のニオイなどが混ざり合った酸っぱいようなカビくさいような異臭が漂っていました」
そう話すのは、高校教諭の濱中拓郎さん(仮名・30歳)。学生時代は別の運動部に所属しており、剣道はまったくの素人。「竹刀も握ったことがないから指導はできない」と訴えたそうですが聞き入れてもらえず、学校側から半ば強引に押し付けられてしまいます。
鼻がひん曲がるかと思った
「教頭からは『練習に立ち会ってくれるだけでいい』と言われましたが、あのニオイには正直参りました。私は昔からどうも人より嗅覚が敏感らしく、初日は稽古中に顔を出したんですけど、鼻がひん曲がるかと思ったほど。でも、生徒たちは一生懸命練習しているわけだし、『臭い!』なんて口が裂けても言えないじゃないですか。
当時はコロナが流行する何年も前だったから今と違ってマスクを付けることもできず、練習を見ている時間はまるで苦行のようでした(苦笑)」
剣道部は地元でも強豪校として知られ、夏休みに入ってもほぼ毎日練習。学期中よりも練習時間が長くなるため、それに伴い立ち会う時間も長くなったといいます。