胸が一気に苦しくなった告白の内容

　詩乃さんの話では、酒癖の悪い父が暴力をふるうことも多く、中学生になって父に抵抗。そのとき拍子が悪く、逆に父親にケガをさせてしまったと言うのです。警察沙汰にはならなかったものの、ますます暴力は酷くなってしまったのだとか。

「詩乃のお母さんは、父の暴力から逃れるために詩乃さんを連れて家を飛び出し、寮付きの風俗などで働いていた時期もあったと告白されました。また、入院中の母の病院代などを捻出するため、僕には内緒で水商売をしていることも話してくれたのです」

　そして、「いつかは話さなければいけないと思ってはいたけれど、純ちゃんに嫌われたくなくてなかなか切り出せなかった」と言い、「そんなときに実家の話を聞いて、結婚は絶対に許してもらえないだろうと思って別れを決意した」と続けます。

「詩乃の話を聞いて、『やっぱり詩乃は、家族が警察官や教師だからと引くような人じゃないし、よほどの理由もなく音信不通になるような人ではなかった』と嬉しく思いました。また、ずっと苦しい思いをしてきたのだろうと胸が一気に苦しくなったのです」

両親を説得してめでたく結婚

　次の瞬間、千堂さんは号泣しながら「苦しかっただろう」と詩乃さんを抱きしめていました。そして、「お母さんや詩乃が悪いわけじゃない。僕が詩乃とお母さんを守りたい」と、あらためてプロポーズします。

「最初は戸惑っていた詩乃ですが、『両親や兄も、話せば絶対に僕と同じことを言う。もしもそうじゃなかったら、わかってもらえるように僕が必ず説得する』と言いました。もちろん家族は僕と同じ考えだと言ってくれましたし、詩乃のことをとても気に入っています」

　2人はめでたく結婚し、千堂さんの家族と詩乃さんの母もいい関係を築いているとのことでした。自分ではハードだと思えるようなカミングアウトでも、ずっと隠し続けるよりは思い切って話してみるほうがいい場合もあるかもしれません。

＜TEXT／夏川夏実　イラスト／本田しずまる（@hondashizumaru）＞

―特集・実録！私の結婚トラブル―