エンジニアからプロ棋士へ――どん底から将棋界を変えた男の奇跡
一見地味ながらも、多くの人々を熱狂させている将棋。いまや一大ブームとなり、注目を集めていますが、そんななか話題の将棋映画が公開を迎えます。その作品とは、豊田利晃監督最新作『泣き虫しょったんの奇跡』。
一度はプロ棋士になる夢に破れ、サラリーマンになるものの、35歳で再度プロ棋士を目指すという前例のない挑戦に立ち向かったひとりの男の軌跡を描いた感動の実話です。
主人公となるのは、しょったんこと瀬川晶司五段。そこで今回は、ご本人に当時の思いや夢を実現させる秘訣などについて語ってもらいました。
人生において無駄なものはないと感じた
――本作はご自身が書かれた自伝が映画化されたものですが、自分の人生を映画という形で客観的に見て感じたことはありますか?
瀬川晶司(以下瀬川):なかなかおもしろい人生だなとは思いましたね(笑)。あとは、すべてのことが子供の頃からつながっているものであり、「人生に無駄はないんだ」ということを映画で観て改めて感じました。
――観客の方にはどんなメッセージを受け取って欲しいと思いましたか?
瀬川:「夢をあきらめない」というのがひとつのテーマでもあるんですが、熱中するものを見つけるといろいろつらいこともあるけれど、いいこともあるんだということは知ってもらいたいですね。
――本作を手がけた豊田監督も9歳から17歳の頃には将棋のプロを目指して、プロ棋士養成機関である「奨励会」に在籍していたそうですが、同じように挫折した経験をした者同士通じるところもありましたか?
瀬川:豊田さんもやっぱり将棋が好きなんだなというのは感じました。将棋をやめたときは将棋を憎んでいたようですが、今回この映画を撮ってくださったのも将棋への愛があったからこそ。自分の駒もずっと大切に持たれていたようなので、お互いに将棋から離れられないんだなと思いました。
――今回、ご自身の役を松田龍平さんが演じられていますが、アドバイスしたこともありましたか?
瀬川:あまり具体的なことは聞かれていませんが、僕の仕草はうまく盗まれたなと思います。自分ではわからないんですけど、僕の棋士仲間によると、動きや雰囲気がそっくりだそうで、「やっぱりプロはすごいな」と思いました。ただ、この撮影に入る前には、『散歩する侵略者』で宇宙人の役をされていたこともあり、宇宙人のあとに実在する人物を演じるというのは難しいとは言われていましたね(笑)。