育休取得率「5年連続100%」企業の社員も…「収入減が不安」のリアルな声
誰かが育休を取ると…育休の連鎖反応
2人目以降が生まれると、突然目の前に現れた弟・妹に対して長子が戸惑ったり、「両親の愛情を奪われた」と感じて不機嫌になったりすることがあります。その時期に石川さんが育休を取ることで、そのケアもできたのです。最後に、石川さんは「育休の取得は連鎖反応を起こす」という実体験を教えてくれました。
「仲の良い友人数人と会ったとき、私が育休を取ったこと、育休を取ってよかったと感じたことを話したことがありました。その後、何人かから『自分も取ったよ』と連絡を受けました。会社の後輩から相談を受けたときには、育休取得を勧めるようにしています。誰かが育休を取得して、その良さを伝える。そうすることで、育休を取る男性が増えていくように感じます」
有給休暇も周りの目を気にして取得しないケースが目立つことを考えれば、周りの男性が取り始めると、「自分も」と行動する可能性は高いです。余談ですが『子育て支援の経済学』(山口慎太郎氏著、日本評論社)によると、男性の上司が育休を取ったときに部下に与える影響は、同僚間の2.5倍に上ることが示されています。マネジメント層にいる男性の育休取得は、職場に与える影響が大きいのです。
上司と良好な関係を築いて環境づくりを
石川さんのほかにも、育休取得経験を持つ男性の意見を聞いてみた。30代の河合さん(仮名、金融業界、入社10年目)は、かねてから「男性も育児や家庭に向き合う時間をもっと作るべき」との考えを持っていました。
「私の父親は育児に主体的に向き合っていなかったこともあり、家庭を顧みない父親像にネガティブなイメージを抱いていました。こうしたことからいわゆる“イクメン”に興味を持っていました」
河合さんは妻が妊娠2か月のときに上司に育休を取りたい旨を申し出て、引き継ぎのための時間に余裕を持たせる工夫をしています。普段から上司や同僚と良好な関係を築き、育休を取りたいとの考えを伝えやすい環境を作り、育休取得への準備をしていました。もちろん、こうした配慮をせずとも育休を取得できる状況が理想ですが、こうしたことから、河合さんは職場で初となる男性育休取得者となりました。
同じく30代の下村さん(製造業、入社4年目)は、同期が取得したことを機に育休を意識し始め、第一子誕生後の2020年に3か月の育休を取得した。育休を取り家族のケアに努めた結果、「子どもへの愛しさが強まりましたし、家庭に向き合う時間を作ったからこそ育児と家事に積極的に取り組めました。私がひとりでできることが増え、妻の負担は軽くなりましたね」と話してくれました。