シェアリングエコノミーも「モノ」から「コト」へ。体験を共有できる「民旅」とは?
――ゲスト(ツアー参加者)やホストを増やすために行っていることはありますか?
上田:大事にしているのは「世界観」。メンバーともよくディスカッションしますが、ゲストの方々にはTABICAを普通の旅行ツアーだと思ってほしくない。ただのお客さん、観光客気分だと、受け入れる側のホストの方も「そんなつもりじゃなかった…」って気になるんです。
――それはなぜでしょうか?
上田:シェアリングサービスが、そもそも人と人との交流の上に成り立つものなので、思いやりとか関係性がないと意味がない、と僕は思うんです。結局、そこで生まれた人間関係が口コミだったり、提供するサービスの満足度にも繋がる。民泊でも、使用済みのタオルをそのままにして帰ってしまうゲストの方がいるそうですが、それはダメ。
だって、ホストの方は、ただの宿泊施設として自宅を提供しているのではなく、そこで生まれる人と人との会話や交流も含めて大事にして提供していますから。
――その点では、日本におけるシェアリングサービスに対する世間の意識はまだまだ浸透しきっていないのかもしれませんが、どのようにお考えですか?
上田:もちろん、とりわけ日本人のなかには抵抗感を覚える人もいるでしょう。ただ一方で、マンションの隣の住人が、誰なのかわからず、醤油の貸し借りもできなくなったのはここ数年の変化。
時代を遡れば、江戸時代には五人組制があって、隣人との共同体が存在した。人間の根底は変わっていないというか、きっかけさえ与えることができれば、すぐにシェアリングサービスの考えは浸透すると思います。
――今はスマホの普及で赤の他人同士の結びつきも強まっています。
上田:そう。今はスマートフォンを全員が所持している。ソーシャルメディアの発達で赤の他人の発言への抵抗感が薄れている。親や友達の推薦するレストランより、食べログのコメントを信用してしまうようになってきたのが、その最たる例です。
――今後のTABICAの展開についてどう考えていますか?
上田:現在、毎月数千人のユーザー様にご利用いただいていますが、1~2年後にはこれを数万人規模にまでに増やしたい。2020年の東京オリンピック開催に向けたインバウンド特需もありますし、訪日外国人の方々にもっと日本を楽しんでもらいたいですね。
最終目標としては、どこかへ遊びに行くとき、そこの地元に住んでいる赤の他人とTABICAを通じて知り合いになって、遊べるような世の中になってほしいですね。
※次回「ベンチャー企業に大事なのは『何としてでも理想の世の中を作る』意志」に続く
<取材・文/井野祐真>