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園子温監督の“性加害”疑惑報道、謝罪文が公開されてもモヤモヤする理由

暮らし

若手俳優を大切にする姿勢が感じられた

エッシャー通りの赤いポスト

画像は『エッシャー通りの赤いポスト』公式サイトより

 今回の1件で、2021年の12月に公開された園子温氏の作品『エッシャー通りの赤いポスト』を思い出してしまった。

『エッシャー通りの赤いポスト』は、完成披露ではなく、マスコミ試写会にも、映画に出演していた若手俳優を連れて挨拶しにきていた。これはかなり珍しいことである。

 今までお世話になった人たちに対して、園子温氏が手書きで試写状の宛名とメッセージを書いたそうだ。その誠意から、コロナ禍で映画作りが大変な中でも、若手俳優を大切にする姿勢が感じられただけに、非常に残念でならない。

謝罪文は公開されたが…

 本作は、もともとワークショップとして始まったものが、物語が膨らむにつれて劇映画となった作品。エキストラや売れない役者のひとりひとりに、それぞれのバックボーンがあり、その運命が交差するオーディションという場を描いた群像劇だ。

 しかし、皮肉なことに本作には、自分の愛人を映画に出演させることを条件として、圧力をかけてくる映画関係者が登場する。オーディションを行うも、結局はプロデューサーや権力者のコネがものをいうといった、業界の暗黙のルールにメスを入れた作品だったこともあり、不本意ながら、妙な説得力が加わってしまった。

 疑惑に対して、事務所のホームページには、園子温氏本人直筆による、否定交じりの謝罪文も公開された。しかし、「主演にはだいたい手を出した」という発言に関しては、酔った勢いで言った、質の悪いジョークだと信じたい。この発言は、過去を遡って、今までの園作品に出演していた全ての女優に対しての侮辱でもあると同時に、良からぬ誤解を与えてしまっているだけに、この言葉は自身で否定してもらいたいところだ。

 報道には、事実と異なる点もあるようで、今後の展開も注視したい。とはいえ、まずは飛び火している人たちの誤解を解くことが最優先ではないだろうか。

<TEXT/映画ライター バフィー吉川 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

映画評論家・映画ライター。映画情報&批評サイト「Buffys Movie & Money!」を運営中。Stand.fmなどの音声メディアで「バフィーの映画な話」も定期的に配信中。著書に「発掘!未公開映画研究所」(つむぎ書房)がある

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