「同性パートナーシップ制度」は必要?歌舞伎町ホスト経営者が議会を開催
2020年のオリンピックイヤーを見越して、海外からの観光客も増加傾向にある新宿・歌舞伎町。
街の中心にある「歌舞伎町ブックセンター」にて8月20日、「第2回 歌舞伎町議会」が開催されました。
今回のテーマは「新宿区における同性パートナーシップ制度について」。登壇者には歌舞伎町で5店舗のホストクラブを運営する「Smappa!Group」会長の手塚マキさん、新宿区議会議員の伊藤陽平さん、LGBT活動家の杉山文野さんの3名。登壇者と参加者の双方で議論が行われました。
「同性パートナーシップ制度」取り組みの現状は?
現状、法律では同性婚が認められていない日本において、同性カップルにとって結婚に代わるものが「パートナーシップ制度」です。結婚とは男女が夫婦になることと多くの人が捉えています。LGBT当事者がそうした制度を求めるのには、どのような背景があるのでしょうか。
2015年に渋谷区にて、同性カップルの関係を公に証明する「渋谷区パートナーシップ証明」が国内で初めて条例として制定され、パートナーシップ制度という形で事実上の同性婚が認められるようになりました。また、これを受けて当事者同士が連携し、他の地方自治体でもパートナーシップ制度を実現するべく、署名を集めて請願書を提出する動きが起きました。
しかしまだまだ偏見の目が向けられていることも事実。最近では自由民主党の杉田水脈議員が『新潮45』(新潮社)への寄稿文にて、「LGBTは生産性がない」と記述したことが、LGBT当事者のみならず、ネット上や政界など各方面での議論を呼びました。
参加者の全員が「パートナーシップ条例」賛成派
そんな流れを受けて開催された今回の討論会。参加者の中には当事者である男性同性愛者や、親族にトランスジェンダーがいるという当事者に近しい立場の方、豊島区区議会議員でオープンリーゲイ(ゲイを公言すること)として活動する石川大我さんの姿も。
プレゼンターとして登壇した杉山さんは、女性の身体で生まれ、現在は男性として生きるFTMトランスジェンダーの当事者です。
「渋谷区における条例の制定を受けてLGBTの存在が意識され始め、議論の土俵にも上がるようになりました。LGBTやパートナーシップ制度に対して人それぞれに考え方は違うと思うので、改めて言葉にしてもらい、ご自身の考え方を深める機会になればいいと思います」(杉山さん)
参加者の自己紹介もかねて、新宿区でのパートナーシップ条例の制定について賛成・反対の意見発表が行われました。全員が賛成という結果を受け、新宿区議会議員の伊藤さんは以下のように語りました。
「私自身、新宿区議会でパートナーシップ制度をすべきか質問をしたことがあります。各地方自治体で同様の意見が上がっても、可決まで至らないのが現実問題としてあります。新たに条例をつくるにしても、窓口を増やすための人員増加や、自治体によっては、新しい条例を制定するにあたり、他の条例を改正する必要も出てきます。なんとなく賛成するのではなく、どのようにすれば実現するかをみなさんに考えていただきたいです」
パートナーシップ制度が認められないのは、政権与党である自民党をはじめとした政治の側に問題があると主張する声もあります。これに対して「政治家よりも条例制定に伴うコストのほうが課題として大きい」というのが伊藤さんの考えです。
条例とすることが困難である一方で、全国の自治体では条例でなく要綱としてパートナーシップ制度を実施する動きもあります。
条例は法規として認められ、半永久的に実効性が保たれます。これに対して要綱は、各地方自治体の首長の政治的な立場や考え方によっては廃止されてしまうこともあるのです。
「現在、パートナーシップ制度は全国9つの自治体で実施されています。ひと言でパートナーシップ制度といっても自治体によってそれぞれルールが違います。条例として認められているのは渋谷区だけで、その他は要綱としてあるというのが現状です」(杉山さん)