銀座のクラブで高額バイトのはずが…自称・人気演歌歌手が経営するトンデモ飲み屋だった
「ところが、客がほとんど来なかったのです。まぁこんな厚化粧のママしかいない店に来る客なんて、物好きな人しかいませんけどね。しかもそれ以上に困ったのが、お客不在になると、ママが別の店に遊びに行ってしまったこと。まったく誰もお店に来ないので、ただ一人、僕がスタッフとして働かされたんです」
閑古鳥が鳴くガラガラの店内。たまにお客が来ると、ママの携帯に電話をするのですが、他の店で遊びに夢中になっているのか、電話がつながらないこともしばしば……。そのため河村さんはいつのまにか1人で店を切り盛りせざるを得なくなったそうです。
ついにママのファンが大量来店?
しかも銀座のママたちを紹介すると言いながら、店に遊びに来たママは2人だけ。「珍しく暇だから」と近所付き合いのつもりで来店する銀座ママに「この店のお客さんってどんな人なんですか?」と挨拶をしても、愛想笑いをするだけだったそうです。
そんなある日、ついにママのファンという方々が、地方から大勢やってきたそうです。
「地方から演歌歌手のママのファンが団体でやってきました。散々、飲んでバカ騒ぎしていて、酔いつぶれるので、ママと2人で介抱しきれなくなってしまいました。しかも、僕はバーテンも兼用だったので、もううんざりしていました。で、後日さすがにそんな様子を察したのかママが、昼間はOLをしている30代のホステスをバイトとして入店させたんです。やっと銀座の店らしくなって、僕の仕事の負担も減ると最初のうちは期待していました」
同伴で連れてきたトンデモ客の実態は?
しかし、そのホステスが最初に同伴した40代の顧客男性がとんでもない客だったそうです。酔っぱらって「オレは大物政治家の息子だ」「麻薬をやっている芸能人も知っている」などと嘘をついて大暴れ。河村さんは用心棒として、そのお客を追い出し、ママからも「危ないところだったよ~、ありがと~」と感謝されます。
「用心棒として仕事らしい仕事が始めてできて、喜んでいたのですが、なんとそのホステスが『この店は客の質が悪い』と怒って、そのまま辞めてしまったのです。すぐにホステスのいない元の暇な店に戻ってしまいました。相変わらずママは遊びに出掛けているし、僕はたった一人で店のカウンターに座っている。次第に時給1000円とはいえ、こんなことをしていても意味がないと気づき、お店を辞めました」
当たり前の話ですが、いくら銀座の繁華街でも、働く店はきちんと選ばなければいけないようですね。河村さんはお店を辞めて、しみじみと痛感したそうです。
<取材・文/夏目かをる>