銀座のクラブで高額バイトのはずが…自称・人気演歌歌手が経営するトンデモ飲み屋だった
「カネになるどころか、むしろ何も残りませんでしたよ……」
そう嘆くのは、大手メーカーで事務職として働く河村泰治さん(仮名・26歳)。就職難の時代になんとか内定を勝ち取ったものの、思ったほど給料は上がらず。そこで、河村さんが選んだのが、会社に黙ってこっそり副業を始めることでした。
「趣味でよくお笑いライブに行くのですが、そこで知り合った同じ年の芸人と仲良くなり、一緒に遊ぶ機会が増えたんです。そんなある日、『知り合いの演歌歌手がやっているクラブでバイトしない?』と持ち掛けられました」
芸人友達の紹介で銀座の店に入店
「その芸人からは『店の経営に関わる仕事だから、売上からマージンも数パーセントもらえるよ』と聞かされました。会社では事務処理しかできない僕にとって、またとないチャンスだと、喜んで引き受けたのですが、聞くと見るとでは大違いでした」
そう語る河村さん。その演歌歌手が経営するお店は、銀座の昔ながらの雰囲気が漂う、8丁目のとある雑居ビルの5階にありました。うきうきしながらドアを開けると、クラブというよりスナックのような狭い店のカウンターに、一人ぽつんと和服姿の厚化粧のママが。
「てっきり演歌歌手はオーナーで店にはいないと思ったら、まさかの演歌歌手はママ本人でした……」と語る、河村さん。そして、奇妙なことに河村さん以外のアルバイトの姿がどこにもなかったのです。
「店のスタッフがいないので、約束の時間を間違えたかなと思っていたら、ママのほうから挨拶をして、招き入れてくれました。しわがれ声で厚化粧のママに『ほかのバーテンは、今日はお休みですか』と聞くと、『先月からバーテンなしでやっている』と答えました。“経営に関わる仕事”というのは、結局のところママ以外のすべての仕事のお手伝い。お酒づくり、片付け、用心棒など、何でもありの雑用係だったのです」
雑用係から経営者に!? 銀座で広がる夢
芸人仲間から聞いていた話と違うため、アルバイトを断ろうとした河村さんですが、「お客さんで私の大ファンの美人の女性がたくさんいて、今度紹介するね」や「時給は1000円で、酔っ払いを追い出したり、友達を連れてきたりしたらマージン1万円払う」と、”自称”人気演歌歌手であるママ必死の願いに根負け。ついに手伝うことになったそうです。
「正直、20代の僕が銀座の店に連れて来られるような友人や知人はいませんでしたが、正直に伝えたら、ママが『4人以上なら1人5000円で飲み放題にしてあげる、カラオケ付きよ』と言ってくれたので、やる気が出ました。あと、『頑張って働いたら、銀座界隈の女性だけのお店に紹介してあげる』というのにも正直、心惹かれました(笑)」
そうしてついに副業を始めた河村さん。始めたばかりの頃は「いつかこのお店でめちゃめちゃ稼いで、銀座で人材派遣のビジネスでも立ち上げられたらなぁ」とやる気を出していたそうです。しかし……。