社長失踪、負債59億円で「全店閉店」のパン店が復活。新オーナーに“計画倒産説”を直撃
ベルベの突然の倒産、その裏側は?
――それでは、倒産の情報も事前に伝わっていたのでしょうか。
小嶋:いえ、義理の父とはあまり接点がなかったんです。私は結婚後、ベルベに入社したのですが、社長のいる本部事務所にはここ3年ほどはまったく行っていません。
――入社したときは「ゆくゆくは自分が社長になるかもしれない」という意識はなかったのでしょうか。
小嶋:まったくなかったです。ベルベには義理の兄、つまり社長の長女の夫が役員として在籍していたので、いつかは義理の兄が会社を継ぐだろうと思っていました。私自身は、折を見て、ベルベから独立するつもりだったので。
突然の失踪から見えてきた経営状況
――ベルベの経営状況はどうだったのでしょう。倒産の兆しはあったのでしょうか。
小嶋:経営の情報に関しては社長が一手に担っていたので、社員の私はもちろん、幹部ですら赤字なのか、黒字なのかすらわからなかったようです。石川社長は独善的な人で、すべてを自分一人で抱えていたんです。ただ、2020年6月期の年売上高は25億6000万円と公表していましたし、経営には問題がないと思っていました。
――それでは、倒産の話は寝耳に水の状態だったのですね。
小嶋:社長が失踪したのが、2021年11月2日のこと。その日の朝、事務所に出社した社員が置き手紙を見つけました。失踪してからわかったのですが、2021年10月に社長は都内の弁護士事務所に民事再生計画の相談をしていたようです。失踪後、社長しか知らない情報が多かったため、その弁護士事務所に相談し、いろいろと調べたところ、50億円を上回るであろう負債が発覚しました。
この負債額ではさすがに事業を存続できないということで、11月8日に全店閉店・翌9日に自己破産申請の準備に入ることを発表しました。その後、今年2月に入り、破産申請をし、2月8日に受理されたという流れは報じられたとおりです。私も事業停止のことを聞いたのは2日前、一般の社員にいたっては当日の朝に伝えられました。