仕事は見返りのない苦しみ?「働くのやめた」若者が世界で増加中のわけ
『あやうく一生懸命生きるところだった』がベストセラーに
苛烈な競争社会の韓国では数年前から「N放(ポ)世代」という言葉が広く使われ始めた。「放」は「諦める」という意味で、変数の「N」に恋愛、結婚、出産、就職やマイホーム、人間関係や夢などが代入され、すべてを諦めた世代」を表す。
そんな韓国で、プランなしに会社を辞めたハ・ワン氏が、寝転がってビールを飲む日々を綴るエッセイ『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社)を刊行。競争に疲れた人の共感を集め、2019年のベストセラーとなった。
中国でも「寝そべり族」がバズワードに
同じく格差が拡大する中国でも、昨年5月ごろから最低限しか働かず、精神的なゆとりを大事にする「寝そべり族」が若者の間でバズワードとなった。「社会の発展を阻害する」として政府が規制を行うなか、『寝そべり主義者宣言』と題された小冊子が当局の目を盗んで自主流通し、各地で読まれているという。
高円寺でリサイクルショップを経営し、著作や活動のなかで金ではない価値感を模索してきた松本哉氏。近年はアジア地下文化圏との交流を深めるているが、この冊子の日本語訳版の販売を手がける。
「マルクスの『共産党宣言』になぞらえて、偽者を断じて全世界の真の寝そべり主義者への団結を呼びかけるなど、内容はけっこう過激。ただ、中国の知り合いに聞くと、実は寝そべり族はそこまで厳しい取り締まりを受けていない。のんびりしてるだけで罰するわけにもいかないし、この冊子にしても資本主義への批判こそあれ、共産党の本来のあり方に近かったりもするから、当局もどう対応していいか困ってる様子です」
アフターコロナの世界では、多くの国で新たなロストジェネレーションが生まれ、「寝そべり族」のようなあえて働かない若者達の存在が顕在化していくのだろうか。